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それに……多少の資金は必要だ。父の遺産はあまり無いが、それでも今後援助が切れたら入院費用に充てようと……母の口座に残してあり、その中から、何かの時には使えるように、幾らかの現金は部屋の財布の中にある。
―― 大丈夫……きっと、彼は部屋には居ない。
大抵いつも居ないのだから、今日に限って居るなんて事は無いだろう。そうとも思い込まなければ……部屋に戻れなくなってしまうから、叶多は必死に自分自身に何度もそう言い聞かせた。
部屋に戻って荷物を纏め、夜のうちに寮を出る。
正門からでは難しいかもしれないが、広大な敷地の何処かに出られる場所はある筈だ。
―― 何より、もう……。
ここには居たくない。
「くっ……うぅっ」
立ち上がろうと身体を起こすと節々に痛みが走り、アナルの中にまだ何かが挿さっているような感覚がした。
「いっ……」
それでも何とか立ちあがるけど、その途端……内股付近に何かが伝い、それが何だか分かるだけに叶多は泣きたい気持ちになる。どんなに抵抗してみた所で、本来持つ体格や、力の強さには叶わない。
大勢の人間に、抑えられれば尚更に。
―― だから……。
弱い者に残された道は、いいなりか、逃げ出すかに自然と決まってしまうのだ。これからの二年間、いいなりになって過ごす為には、叶多にとって酷い事がこの数時間で起こり過ぎた。
―― これは、きっと……。
須賀によって仕組まれた罠だ。
こうなる事が分かっていて、叶多を従者に指名した。だから居場所も分かっていて、タイミング良く現れた上に大勢の前で叶多を犯した。
噂はきっとすぐに広まり、この学園に留まれば……更に酷い仕打ちに遭うのは火を見るよりも明らかだ。
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