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答えなんて無い事は既に分かっていたが、考えずにはいられなかった。強者の立場にいる彼らには、これは単なる遊びであって、たまたまそこに叶多という名の駒があっただけなのだ。
「何か食べ物を持って来ますから、待っていて下さい」
ようやく全てを出し切った後、事務的にそう告げた射矢は、腹の下からクッションを抜いて部屋から一旦出ていった。
「んっ……うぅ」
ベッドに取り残された叶多は体に力が全く入らず、浅い息を繰り返しながら、瞼を閉じて涙を堪える。
行為中から続く震えは今もまだ止む気配が無く、守るように身体を丸めると、胃の奥の方がギュッと痛くなり、口枷のせいで開いた口からタラリと唾液が頬へと伝った。
***
「叶多は? どうして学校に来て無いの?」
「それを知ってどうするつもり?」
副会長の伊東圭吾にこちらから声を掛けるなんて、本来であれば絶対しないが、そうも言っていられないから瞬は彼を呼び出した。
「お前がそういう言い方をするって事は、やっぱり只の体調不良じゃないって事だな……どうするかは聞いてから決める。だから教えて」
鋭い視線を圭吾に向け、そう言い放つ瞬の姿に、叶多と一緒に居た時のような柔らかさは微塵も無い。そんな瞬の強い姿勢に一瞬瞳を細めた圭吾は、口角を綺麗に上げると頭一つ低い場所にある瞬の頬へ指を伸ばした。
「そんなに知りたい?」
「教える気が無いなら他を当たるからいい。お前とつまらないやり取りをしてる暇は無い」
須賀の従者になってからも、通常通り登校していた叶多だったが、休みが二日になったところで胸が酷くざわつきだした。二日位でと言われてしまえばそれまでの話だが、クラス委員の岩崎が、他の生徒としていた話が耳に入ってしまった今、黙ってなどいられない。
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