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「それが俺にも分からない。調べた結果は手紙にもある通り、小泉君はいつも御園の側にいたってだけだから……何であんなに拘るのか、俺も知りたい位だよ」
「リンチしたって噂……本当なの?」
「リンチ……か。まあそれに近いかもね。でもさ、瞬がそれを知って……何ができる?」
「……っ!」
一歩距離を縮められ、後退ろうと動いた途端、肩を両手でガシリと掴まれ背筋を悪寒が通り抜けた。
「小泉君は、散々ヤられてベッドの上から動けない。助けに行こうなんて事は、考えない方がいい」
「離せ」
「いい? 瞬は今、従者になる事を了承した。だからたった今から俺の命令は絶対……だよね?」
「それは……」
「跪いて」
あくまで笑みを絶やす事なく告げてくる彼の低い声音に、瞬は身体を振わせながらも睨むように圭吾を見た。
「従者にはなる。だけどそれは出来ない。罰を与えるって言うなら、そうすればいい。それに……圭吾が何て言っても、俺は叶多を助ける」
「瞬はそう言うと思った」
クスリと笑みを浮かべた圭吾が「冗談だよ」と言ってくるけど、跪けなんて言われた事で心臓が音をかなり速めた。
「今は、瞬が従者になったってだけで嬉しいから」
「冗談だろ? 圭吾が喜ぶ理由が無い」
「小泉君に近付くのはきっと瞬でも難しい。まあ、瞬の事だから、闇雲に突っ込んだりはしないだろうけど、今は止めておきなよ。最悪にはならないように、俺が何とかするから」
「それは……どういう」
「そのままの意味だよ。残念ながら裏は無い」
珍しく、真剣な顔で告げて来るから瞬は内心動揺する。
「今は大人しくしてろ。瞬が、初めての友達を大事にしたいって思ってるのは良く分かる。だけど、相手が悪過ぎる」
「違うっ、そんなんじゃ……」
見透かされたと思った途端、グイッと身体を引き寄せられた。
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