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第2章

【第二章】  湯の中に、プカプカ浮かんで揺られているような感覚。  温かくて、幸せで、もし天国があるとしたら、こんな場所なんじゃないのかと、ぼんやり叶多は考えた。  道の無いような木々の中、雨に打たれながらも必死に前へと進んでいたけれど……遂に力尽き、草むらの中に倒れ込んだのが、叶多に残る最後の記憶。  冷たくて、痛くて、苦しくて、もしかしたらこのまま自分は死んでしまうんじゃないかと思った。  歩いていればじきに道路に出られる筈だと思っていたのに、運命はどうしてこうも自分に対して冷たいのかと呪いたくもなったけど……誰かに助けを乞うような真似は心の中でもしたくなかった。  ―― 祈っても、助けなんか来たこと……ない。  だから、全てを諦めようと思った。なのに、何故生きたいと願ってしまうのか分からないまま、叶多は意識をプツリと断ってしまったけれど――。 「……あ」  掠れてしまった小さな声。目を覚まして、最初に目に入って来た照明器具に、叶多は自分が失敗したと悟って泣きたい気持ちになった。  ―― どうして? 「目が覚めた?」 「あ……」 「喉、痛いだろ? 話さなくていいよ」  聞こえて来たのは須賀の声では無かったけれど、誰だか分かった叶多の身体は一気に強張り震え出す。 「な……ど、して」 「熱が下ってないから、まだ眠ってた方がいい」  軽く頭を撫でられて、条件反射でビクリと身体が跳ね上がる。

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