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『叶多……これからは、私を父親だと思って、何でも頼りなさい』  病気で父が亡くなった時、彼に掛けられた優しい言葉に自然と零れてしまったのが……思えば最後に流した涙だ。信頼し、尊敬していた。  ―― 全部、僕が悪いんだ……僕が……。 「う……っうぅ!」  突然身体を強く揺さぶられ、叶多は夢から引き戻される。 「あっ……あ、あぁ!」  頭の中が混乱し、引き付けのように痙攣するのはこの夢を見るといつもの事だが、今回は更に酷かった。 「伊東、抑えろ」 「―――っ!」  須賀の声に恐怖が増して、声にならない悲鳴が上がる。また舌打ちの音が聞こえて、鼓動が動きを一気に早めた。 「……了解」  伊東の答える声と同時に手首を上から抑えられ、パニックの余り抵抗すると「落ち着いて」と、小さな声が叶多の耳に響いてくる。 「待て、やっぱりいい。お前は出て行け」 「だけど、こんな状態では……」 「命令だ」 「っ……うぅっ」  耳に入った言葉の意味が、徐々に頭に入ってきて……今見ていたのは夢だったのだと分かった叶多が動きを止めると、ホッとしたような伊東の顔が見えて内心驚いた。 「あ……あっ、あの……」 「分かりました。控えてるんで、何かあったら呼んで下さい」  叶多の言葉を遮るように自然な動きで頬を撫でると、伊東はそのままベッドから離れドアの外へと去ってしまう。だから……部屋の中に残されたのは、相変わらず表情の全く読めない須賀と、ようやく意識がはっきりしてきた叶多の二人だけとなった。 「逃げられなくて残念だったな」  抑揚の無い低い声。答えられずに視線を逸らすと、顎を取られて無理矢理視線を合わせるように固定された。

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