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「嫌……です」
喋れば喉が酷く痛い。想像以上に掠れた声に発した自分が驚いたが……同時に叶多の胸の中には後悔の念が押し寄せた。
―― まずい、こんな事したら……。
「分かった」
冷たい声音でそう答えながら見下ろしてくる須賀の表情に、自制が利かなかった自分を悔いるけれどもう遅い。
「覚悟は、できてるんだな?」
口角を更に上げて微笑んだ彼の瞳に宿った怒気に、叶多は気圧され後退るけど、逃げ場なんてどこにもないと心の奥では分かっていた。
***
「んっ……ゔぅっ」
肌理(きめ)の整った白い肌が、薄紅に染まっている。
この部屋の中に充満している淫靡な空気の元を辿れば、細い身体をヒクつかせ、喘ぎを堪える姿が見えた。
「須賀会長、やり過ぎだよ」
「……誰が入って良いと言った?」
伊東の言葉に返事をしたのは不機嫌そうな須賀の声。一年ながら会長になったその実力は認めるが、こんな行為を見てしまっては止めない訳にはいかなかった。
「ノックはしました。理事長がお呼びです。できれば小泉君とも会って話をしたいそうですが、どうする?」
鋭い視線を受け流しながら淡々と報告すると、僅かだが不機嫌そうに口の辺りが歪むのが分かる。
「いつ帰って来たんだ?」
「さあ……分からないけど、会長の携帯が繋がらないってぼやいてましたよ」
部屋に備えてある内線に出た時はとても驚いたけど、タイミングは良かったようだと伊東は内心安堵した。ここで須賀が出ていけば、ベッドで苦しむ小泉叶多を、一時でも休ませる事が出来るだろうと思ったから。
「行かないと来るな。分かった、少し出るから見張ってろ」
「了解」
叶多を連れて行かない理由を、どう説明するのだろうかと考えながら返事をすると、
「コイツには触るな」
と、言い捨てた須賀がドアの向こうへ足早に姿を消した。
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