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これまでも、従者がセックスを無理強いされるケースは無くもなかったが、須賀の叶多に対する仕打ちは余りに酷い物だと思う。
現状では……自分と射矢しか知らないが、きっと他の役員が見たら驚くに違いない筈だ。
今まで……男には興味が無いと公言して憚らなかったし、生徒会活動に於いても学業の場面でも、暴力的な性質を見せた事など知る限り一度も無い。男らしく、理知的で、カリスマ的な人気を誇る須賀だから、ここのところの行いを見て伊東は不思議でたまらなかった。
「ん?」
携帯がメール着信を告げ、思考を一旦中断してから伊東はそれを確認する。
「……今日はもう何も無いから、ゆっくり休みな」
聞こえているかは分からないけど、なるべく静かに声を掛けると、いつの間に落ちてしまっていたのか既に意識を飛ばしていた。
―― そりゃ、こんなんじゃ、体力持たないよな。
拘束具を外し終えてから寝衣の上だけを叶多に着せ、布団をなるべく上まで掛けて額に冷却シートを貼る。
「あとは……」
少し部屋を換気してやれば問題は無いだろう。
たった今、須賀から届いたメールには、〝理事長が見舞う〟とだけ簡潔に書かれていた。
おそらく叶多は風邪を引いて、寝込んでいるとでも言ったのだろう。結果……自分のした行為が須賀にバレる事は無くなった。今後の事を考えれば、今回はかなり運が良いと言えるだろう。
「もし、目が覚めたら……キミは助けを求められる?」
理事長は須賀の父親で、調べによれば叶多の学費や、母親の医療費までを出している……いわば、彼にとっての恩人だ。
そんな相手に息子が犯した不祥事を、ましてや性的な物を含む内容を、訴える事が出来るようには伊東にはとても思えない。
「ごめんな」
荒い息を繰り返している叶多の髪を軽く撫で、聞こえて来た呼び鈴の音に踵を返すと伊東は静かに寝室から立ち去った。
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