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 ―― ここに、指を……。  自ら挿し込まなければいけない。  そうしなければ慣らせないのは分かっているが、どうしても勇気が持てずに叶多の指はまごついた。 「どうした? まさか、自分じゃやったこと無いとか言わないよな」  (あざけ)るような須賀の声に、悔しいような気持になる。やった事なんてあるわけ無い。でも、そう口に出してみたところで、信じて貰えるわけも無い。 「くっ、ううっ」  勇気を出し、歯を食いしばって人差し指を中へ少しだけ挿し込むと、一層気持ち悪さが募って叶多は小さく呻きを漏らした。 「んっ……」  どうすれば良いか分からないから、浅い場所でクルクルと指を動かしながら、ローションを塗り込める。  以前射矢にされた時は、もっと奥まで挿れられたような気がするが、今は恐怖が勝ってしまい、それ以上指を入れられなかった。 「いつも相手にやらせてたのか?」 「ひっ!」  ギシリとベッドが軋むと同時にすぐ耳元で声が聞こえ、驚きに声を上げた瞬間、背後に回していた手首を須賀にギュッと掴まれる。 「そんなんじゃ、いつまでたっても突っ込めないだろ」 「やっ、あっ……あぁっ!」  そのまま……指を奥まで挿し込むように強い力で下から押され、叶多が前に逃げようとすると、空いている方の須賀の掌が肩をガシリと抑えてきた。 「手伝ってやるからさっさと慣らせ」 「いっ……あぁっ」  冷酷な声に身体が(すく)むが、苛立ちを含む彼の声音に叶多はコクリと唾を飲み込み、根元まで中に入ってしまった指をゆっくり動かし始める。奥まで塗れてはいなかったから、引き攣るように痛んだが、これ以上彼を待たせたりしたらきっと酷い目にあわされる。

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