87 / 301
26
―― ここに、指を……。
自ら挿し込まなければいけない。
そうしなければ慣らせないのは分かっているが、どうしても勇気が持てずに叶多の指はまごついた。
「どうした? まさか、自分じゃやったこと無いとか言わないよな」
嘲 るような須賀の声に、悔しいような気持になる。やった事なんてあるわけ無い。でも、そう口に出してみたところで、信じて貰えるわけも無い。
「くっ、ううっ」
勇気を出し、歯を食いしばって人差し指を中へ少しだけ挿し込むと、一層気持ち悪さが募って叶多は小さく呻きを漏らした。
「んっ……」
どうすれば良いか分からないから、浅い場所でクルクルと指を動かしながら、ローションを塗り込める。
以前射矢にされた時は、もっと奥まで挿れられたような気がするが、今は恐怖が勝ってしまい、それ以上指を入れられなかった。
「いつも相手にやらせてたのか?」
「ひっ!」
ギシリとベッドが軋むと同時にすぐ耳元で声が聞こえ、驚きに声を上げた瞬間、背後に回していた手首を須賀にギュッと掴まれる。
「そんなんじゃ、いつまでたっても突っ込めないだろ」
「やっ、あっ……あぁっ!」
そのまま……指を奥まで挿し込むように強い力で下から押され、叶多が前に逃げようとすると、空いている方の須賀の掌が肩をガシリと抑えてきた。
「手伝ってやるからさっさと慣らせ」
「いっ……あぁっ」
冷酷な声に身体が竦 むが、苛立ちを含む彼の声音に叶多はコクリと唾を飲み込み、根元まで中に入ってしまった指をゆっくり動かし始める。奥まで塗れてはいなかったから、引き攣るように痛んだが、これ以上彼を待たせたりしたらきっと酷い目にあわされる。
ともだちにシェアしよう!