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「火傷……です」
囁くような小さな声で答えると、指はそこから少し移動して「こっちは何だ?」と尋ねてくる。
「それは……分かりません」
「へえ……」
火傷は煙草を押しつけられ、薄く残された裂傷の痕は鞭で打たれた時の物だが、思い出したくもない過去だから、こんな不毛な質問をするのは心底止めて欲しかった。
「誰にやられた?」
「……覚えてません」
忘れてしまった訳では無いが、それを彼へと告げたところで過去を変えられる筈も無く……ただ惨めだった昔の自分を、思い出してしまうだけだ。
そう考えて睫毛を伏せると、いきなり顎を強く掴まれ、無理矢理視線が絡むように上向きに固定されてしまった。
「自分の立場、本当に分かってるのか? そんなつまらない言い訳が、俺に通用するとでも? ここまでの痕付けられて、覚えてねーは無いだろう?」
「そ、それは……」
「言え」
「あ、あ……」
鋭い視線に射抜かれながら、叶多はとにかく何かを言おうと、小さな口を喘ぐように開閉させる。
だけど……追い詰められたこの状況では上手い言い訳も見付からず、口を開いても声が出せなくて目の奥の方がツンと痛んだ。
「また逆らうのか?」
苛立ちを含む須賀の言葉に、焦りが心を支配する。
―― 早く、何か言わなきゃ。
痛みも、そして快楽も、どちらももう受けたくなかった。
だから懸命に口を開いて言葉を紡ぎ出そうとするが、パニックになった頭の中へと突如映像が溢れ出し……叶多は瞳を大きく開くとカタカタ体を震わせはじめた。
「やっ……あぁぁっ!」
「ちょっ、どうした」
倒れそうになった身体を慌てて須賀が支えると、叶多は自ら喉の辺りへと爪を立てて引っ掻き始める。
「止めろっ」
「やっ、やだっ……やめてっ!」
一瞬何が起きているのか理解できずに遅れたが、須賀は叶多のか細い手首を纏めて掴んで動きを封じた。
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