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「何だっていうんだっ」
ただ誰が付けた傷痕なのかを問い質しただけなのに、何故こんなに過剰反応するのか分からず動揺する。
「あっ、ああっ!」
「落ち着け!」
「や……いたぃっ……やめっ、んぐぅっ」
久々に、大きな声で叫んだけれど、全く届く気配はない。そればかりか、開き切った大きな瞳に涙の幕が張るのが見え、須賀は小さく舌打ちすると、華奢な身体を強く引き寄せ唇に深く口づけた。
***
『ど、ど…して? なんで、こんな……』
『叶多もようやく高校生になったから、そろそろいいと思ってね』
いつもと変わらぬ優しい笑み。だけど、その瞳に宿る狂気は、行動からも言葉からもすぐに感じることが出来た。
―― あれが、悪い夢だったら。
『簡単なことだ。叶多がちゃんと言うことを聞ける良い子なら……ご褒美をあげるし、悪い子だったら罰を与える』
『っ!』
手に持った鞭の柄の部分で顎を上へと向かされて、自分を繋ぐ鎖がカシャリと無機質な音を響かせる。
『蓮のようになりたいんだろ?』
『……お…父さん?』
―― 違う! お父さんはあんなこと……してない!
『叶多は蓮に良く似てきた。高校時代のアイツに……大丈夫だよ、ちゃんと言うことが聞けたら、唯人にも黙ってるし、痛くもしない。叶多には…… 蓮の代わりに守らなくちゃならない物があるだろう?』
穏やかな声と紳士然としたその態度が、余計に叶多の恐怖を煽るが、受け入れるなんて出来やしない。信頼していた相手が突然豹変したのも信じられなくて、当時の叶多は力の限り伸ばされた手に抗った。
―― 嘘だ。お父さんには……お母さんが。
『嫌だっ、やめて!やめっ……』
空気を裂く革の音。焼けるように痛む体。
『だれか、誰か……たすけ……』
『いくら呼んでも助は来ない。今、叶多を苦しみから救えるのは、私だけだ』
―― 違う……これは、こんなのは……。
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