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『私は君の父親の蓮と、大学時代親しくしていた。御園も蓮と親しかったから、良く三人で遊んだものだ』 『そう……ですか』 『昔のことだ。卒業して、蓮が御園の会社に入ってからは、殆ど会って無かった。まあ、理由は色々あるんだが……。それで、病気になった蓮から私に連絡が入ったのが、彼が死ぬ二カ月くらい前の事で、法的な書類を揃えて持ってきた。自分が死んだ後、二人を頼みたいって……こんな時ばかり済まないとも……』  そこまで話をしたところで、料理が席へと運ばれた為、一旦話を切った彼は叶多を真っ直ぐ見詰めてきた。 『叶多君は、蓮に良く似てるな。色々あって辛かったと思うが、もう手を出させやしないから、安心して欲しい』  本当なら、一人暮らしを叶多にさせ、母親とも頻繁に会えるようにさせたかったが、状況から全寮制の方が安全と判断したと説明され、彼は全てを知っているのだと分かった叶多は食事をしている手を止める。 『君が二十歳になったら、全てを返す約束になっているから、それまで……蓮の代わりに見守らせて欲しい』  そこまで話を聞いたところで、どうすればいいか分からなくなった。 『それで、悠哉とは上手くやっているかい?』  話は突然須賀へと移り、叶多の身体に緊張が走る。須賀を思い浮かべただけで震えてしまいそうになるが、何とか堪えて視線を上げると優しげな笑みがこちらを見ていて、その声も顔も良く似ているのに全く違う印象を受けた。 『彼からは、心配だから従者にして同室にしたと聞いてるけど、何か心配事は無いかい?』 『あ……あのっ』 『ん?』  首を僅かに傾ける彼に、本当の事を言うなら今しか無いと叶多は息を吸う。安全だと思った彼に転入させて貰った学校で、どんな目に遭っているかを今言わなければ、状況は変えられない。

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