117 / 301
56
「あっ……あぅ」
―― ちが……ちがう。
先日時間を掛けて須賀に教え込まれた快楽と、彼への恐怖がない交ぜになって、パニックになった叶多の頭は、先程彼に浴びせかけられた罵声で一杯になっていて。
『親父に使わせたんだろ?』
―― ちがうっ、僕は、そんな……。
「うぅ……ふ…んう」
「……お前、何してるんだ?」
自由になった手を動かしてパジャマのズボンを脱ごうとすると、流石に驚愕したのだろう……頭を掴んでいた掌を離した須賀が尋ねてきた。
―― してない、僕は……してない。
須賀の父親の名誉の為にも、そうじゃないのだと伝えたいから、必死に震える手を動かしてズボンと下着を下にずらす。常の冷静な状態ならば絶対にしない行動だが、そんな判断も出来ないくらいに今の仕打ちは辛く苦しい物だった。
「なっ」
思いもよらない叶多の動きに、須賀が小さく声を上げる。
うつ伏せのまま露わになった尻だけを高く持ち上げて、後ろに回した掌で尻を掴んで左右に引っ張ったのだ。
「あっ……あうぅ」
開きっぱなしの唇からは唾液がタラタラと下に垂れ、晒された尻は誘うように、不安定にユラユラ揺れた。
「お前……何をしてるんだ?」
訝しむような声と同時に開口具が外されて……ようやく自由になった唇を叶多は必死に開閉させる。
「あっ……な、なにも、してな……僕は……」
そこまでどうにか紡いだ所で意識の幕が切れ切れになり、叶多の身体がガクリと崩れた。
度重なる凌辱によって体が相当弱ったところに、須賀の父との会合があり、精神的にも体力的にもかなり追い詰められていた。
「ううっ」
「もういい」
それでもどうにか起き上ろうと力を込めた指先は、後から伸びた須賀の掌に両方共包みこまれる。
「やっ……ぁ」
何故いつも酷く恐ろしいのに、こんな時ばかり優しいような響きを感じてしまうのか?
「ほんと……なにも……」
「……分かったから」
仰向けに身体を返され、そのまま彼に抱き上げられる。
「寝ろ」
耳許で低く囁く声。少ししてから額に何か柔らかい物が触れた気がしたが、それが何かも考えられずに叶多は半ば気絶するように深い眠りへと堕ちていった。
ともだちにシェアしよう!