＊＊＊ 「……それって、どういう意味？」 「分からないほど馬鹿じゃないだろ？」 　玄関に入れた佐野から一応一通りの話を聞き、圭吾はかなり驚いていたが、表情には殆ど出さずに眉を眇めて考える。 　―― もし、佐野の話が本当なら……。 「情報源も言えないのに、信じろって？」 「信じるかどうかは二人の自由だ。まあ、そんなに考えてる時間は無いと思うけど」 「一つ聞きたい。何で俺達に話そうと思った？」 「去年のよしみって奴？」 「ふざけてんのか？」 「それともう一つ、悠哉は俺を嫌ってるけど、俺の方はそうでもない」 　いつものふざけたような口調が、ほんの一瞬真剣な色を帯びたように感じたけれど、敢えて気付かないふりをして、刺のある言葉を圭吾は返した。 「お前が、血の繋がりを大事にするようには思えない」 「だったら信じなければいい。話はそれだけ……じゃ、俺は戻るから」 　手をヒラヒラと振った佐野が玄関から姿を消す。 　隣で終始沈黙していた瞬の方をチラリと見遣ると、こちらを丁度見上げた彼と自然に視線がぶつかった。 「リビング、戻るか」 「ああ」 　とにかく今の情報も含めて真偽を確かめる時間が欲しい。佐野の言葉は信じられないが、内容だけを考えるならば説得力は十分にあった。 「どうする？」 　ソファーに座ってそう問い掛けると、瞬は少し俯いてから、決意したように手を握り締めて圭吾を真っ直ぐ見詰めてくる。 「叶多の意志を聞きたい。俺は、叶多がそれを望むなら手伝うし、違うなら逃す」 「……だな」 　どうあれ叶多が望むのであれば、佐野の言うような事になっても、敢えて邪魔をするような真似はするべきじゃないと圭吾も思う。だけど。