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「これは……」
「この付近で大規模な電波障害が起きています」
「え?」
「入ってください」
その建物が何なのかすら告げる事なく入るようにと促され……以前のような状況になるんじゃないかと思った叶多の脚は自然と止まってしまう。
「で、でも、何で?」
「会長と直接連絡が取れない以上、安全な場所に連れて行くのが私の仕事です。中には誰も居ないので、騒動が治まるまでこの中に入っててください」
情けなく震える姿を憐れむように振り返りながら、ようやく腕を離した射矢がそう叶多に告げてきた。
「そんな、意味が分からない」
電波障害と安全がどう関係あるのかも……騒動が何なのかも分からずそう問い掛けるけれど、
「話はあとで会長から聞いて下さい」
と、無表情に告げて来るから、不安は更に大きくなる。
「今は意味なんてどうでも……」
「叶多っ!」
焦れたように再度腕を射矢が掴みかけた時、良く知った声が鼓膜に響いて叶多は思わず振り返った。
「あっ……瞬」
「射矢、小泉君から離れろ」
「叶多、来い!」
「……何故ここに来たんです。貴方達には他に仕事があるでしょう?」
眉間に僅かな皺を寄せ、伊東に向かいそう切り返す射矢の手を振り払い、叶多は迷わず瞬の方へと走り出す。
状況はまるで見えないけれど、この学園で唯一信用出来る人物がそう言うのだから、疑う余地などありはしなかった。
「叶多、大丈夫?」
「うん……でも、これは一体……」
「何をやってるんです。早く彼を中に入れないと……」
「ねえ、叶多、御園の所に戻りたい? だったら射矢と行けば会える。それを希望するなら、俺達はここを立ち去るけど……どうする?」
対峙している射矢の耳には入らないよう瞬に囁かれ、叶多は酷く混乱する。
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