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「分からないけど、もしかしたら、須賀は……」
「はい、話はそこまで。あとは俺に任せていいよ」
瞬の台詞を遮るように、彼の背後から響いた声。刹那襲った衝撃によって、叶多はその場に尻もちをついた。
「なっ……」
「ここからは俺が連れて行くから」
「くっ……ぅっ、佐野……お前っ!」
「ご苦労様、久世はそこで休んでな」
一体どこから現れたのか? 何が起きたのか見えなかったが、蹲っている瞬の向こうから、スタンガンを手にした佐野がこちらに手を伸ばしてくる。
「な……ど…して?」
「心配要らないよ。ちゃんと逃がしてあげるから」
「やっ……んぐぅっ」
反射的に逃げようとして叶多は少し後退るけど、殆ど動くことも出来ないまま佐野の持つ布に鼻ごと口を塞がれる。
「んっ、んぅ……」
「おやすみ」と、囁く声がどこか遠くから聞こえた所で、意識はプツリと闇に堕ち、身体がカクリと脱力した。
***
「……きて」
「ん……んぅ」
「起きて、叶多。あまり時間が無いんだ」
聞き覚えのある柔らかな声に促されるよう瞼を開くが、暗い視界はぼんやりしていて相手の姿は捉えられない。
「……唯?」
「うん、そうだよ。叶多……会いたかった」
「あ……」
恐る恐る尋ねた途端、身体をギュッと抱き締められ、驚きと戸惑いに体がビクリと反応した。
薬が残っているせいなのか緩慢にしか動かせないが、それでも腕を伸ばそうとすれば、手首をガシリと掴まれる。
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