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 ―― だけど……だったら、なんで? 「もう食わないのか?」 「あ、はい……もう、お腹いっぱいです」  生徒会室に入ってすぐに弁当が二つ届けられ、須賀の声の命じるままに隣に座って食べている。  色とりどりの箱の中身は確かにとても美味しかったが、小食なうえに緊張していて半分程も食べられなかった。 「薬は?」 「あ、はい。今……」  促されるまま鞄を開くと、叶多は小さなピルケースから錠剤を取って口に含む。  ビタミン剤だと渡されたそれを最初は飲むのを拒んだが……結局彼に口移しされ、抗えないと分かってからは、食後に必ず言われたとおり飲むのが日課になっていた。 「ところでお前……佐野の居場所知ってるか?」 「え? ……いえ、知らない……です」  水で薬を飲み込んだところでいきなり須賀にそう問われ、叶多は少し動揺するが、何処に居るかは分からないから正直にそう口にする。  確かに……期末テストの期間中、佐野の姿を見なかったから、叶多も気にはなっていた。 「そうか」  短く答えた須賀が掌を叶多の方へ伸ばしてきて……反射的に身体を引くと、一瞬眉根を寄せた彼が、身を乗り出して叶多の頭をガシリと掴んで引き寄せる。 「あ、ん……んぅ」  何をするのかと怯えた刹那、唇を須賀のそれに奪われ、彼の行動の真意が分からず叶多は酷く戸惑った。 「んっ……うぅっ……ん」  いつもされている貪るような、激しいキスとは明らかに違い、口腔をくまなく舐められ、舌を吸われて甘噛みされれば、巧みな愛撫に慣れない身体は甘い疼きを覚えてしまう。  ―― ど……して?  テスト期間は一度も須賀と身体を合わせていなかった。  ―― もしかして、気づかれて……ない?  あの日……御園によって刻まれた印は今もじくじくと鈍く痛む。  起きた時、自分は寝衣に着替えさせられ、火傷も処置をされていたから、見られたものだと思っていたが、ここまでの彼の行動を見ると、もしかしたら……別の誰か、例えば全てを知っている佐野が手当てをしてくれたのかもしれない。  そうでなければ、きっと須賀に問い詰められている筈だから。

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