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 ―― でも、そんなことって……。 「んっ、んぅっ!」  そんなに都合の良い事なんてあり得ない……と、考えた時シャツのボタンに指か掛かって叶多は身体を強張らせた。 「う、うぅっ」 「……失礼します」 「ん……くぅ」 と、丁度その時、生徒会室の扉が開いて声が響く。 「お邪魔でしたら出直しますが?」 「いい、入れ」  落ち着き払った射矢の声に、ようやく解放された叶多は内心肩を撫で下ろした。  しかし、射矢と会うのは数日前の出来事以来初めてだから、緊張に……心拍数が一気に上がって視線をうろうろ彷徨わせる。 「入ってもいいそうです」  振り返った射矢が短く廊下の方へ声を掛けると、生徒会の役員達が続々と中に入って来て……その空気から、彼らは自分と須賀の二人を気遣い待っていたのだと、一瞬にして理解した叶多は羞恥に顔を真っ赤に染めた。 「あ……」  全員が揃ったところで叶多が視線を少し上げると、正面に立つ瞬と伊東の姿が視界に入り込み、何故席に着かないのかと不思議に思って声を上げると、こちらに視線を向けた瞬が、「落ち着け」とばかりに薄く微笑みを浮かべ小さく頷く。 「今日の議題だが……射矢」 「はい」  今日は従者が居ないようで、須賀と叶多の席を中心にコの字に配置されている机は、左側に射矢が座り、右側には会計の椎葉と古郡が座っている。  射矢の手前の椅子が1つだけ空席になってしまっているのは、そこが今、目の前に立つ伊東の席だからだろう。 「四日前の騒動についてです。夕方より大規模な電波障害が起こり、学園内ほとんど全ての電子機器が障害を起こしました。これについては予測されていた事態でしたので、連絡手段は無くなりましたが、各々がマニュアル通り決められた仕事を行うべきでした。ちなみに、会長と副会長は寮一階の会議室で対策を立てる役割、会計の二人はその伝達及び風紀と連携しての治安維持、従者は自分の主のサポートをするという形です。そして、ターゲットである会長の従者を安全な場所に移動させるのが私と彼のガードの役割だった訳ですが」  淡々とそこまで話した射矢は一旦言葉を切ると、中心に立つ二人に視線を向けて再度口を開いた。

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