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「次の議題は……連れ去られた従者がそのまま戻された件です。彼が行方不明になっていたのは四時間程度、居なくなったのと同じ場所で発見され、ほとんど時を同じくして、電波障害も復旧しました。小泉君、その間のことは覚えていますか?」
「答えろ」
「あっ……やめっ」
射矢が議題を話す間、伸ばされた須賀の腕によって叶多の身体は引き寄せられ、どういう訳か膝の上へと彼に背中を預ける形で座らされてしまっていた。
「あの、降ろしてください」
羞恥に頬を赤く染めながら、身体を捩って懇願するが、背後から羽交い締めにされては抵抗らしい抵抗にならない。
「言え。見られたく無いだろ?」
「……っ!」
耳元で低く囁く声に、叶多の身体が硬直した。
―― やっぱり……知ってる。
須賀の指先がシャツの上から左の鎖骨の下をつつき、そこから広がる鈍い痛みに身体がカタカタ震え出すけれど、そんな叶多を救う力を持っている人は此処にはいない。
「何も……覚えてないです」
「嘘を吐くな」
何とか声を発した途端に冷たくそう返されて……更にガタガタと震える身体を須賀がクスリと喉で笑った。
「佐野に、何をされた?」
「……に、急に、久世君が蹲って……佐野君が、何か布を、僕の口に……」
シャツのボタンに指が掛かり、焦った叶多は知っている事を思い出しながら言葉にする。
もし傷を瞬に見られたら……きっと彼は、罪の意識を持ってしまうに違いない。それだけは、何としても避けなければならなかった。
「で?」
「それで、意識が無くなって……気付いたら目隠しを、されてました。そこでまた、何かを口に……次に目が覚めた時は、部屋に戻っていました」
「では、貴方は何も見ていないという訳ですか?」
「見て……いません」
「声は? 聞いていませんか?」
こんな状況にも関わらず、冷静に尋ねて来る射矢に小さく頷き返すと、釦に掛かった須賀の指先がそれを外そうと動き出す。
「お願い……止めてくださいっ」
ただ止めて欲しい一心で……須賀の掌をギュッと掴むと、一旦動きを止めた彼は、チッと舌打ちを響かせた後、「次の議題は?」と良く通る声で告げながら指をそこから離した。
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