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 ***  それからの会議はまるで生きた心地がしなかった。  膝の上から降ろして貰えず、いつ秘密が暴かれてもおかしくない状況に、震えは止まらず心臓の音がずっと煩く響いていた。  議題としては、今後何かが起こった時の対応と、その時の個々の連携確認、そして……佐野の行方を捜す手段が次々と話し合われていたが、聞こえていても頭の中にちっとも入って来てくれない。 「……立て、帰るぞ」 「あっ」  所在なさげに俯いたまま黙っている叶多の耳に、須賀が一言そう告げると、ビクリと大きく跳ねた身体はバランスを失い傾いた。 「気を付けろ」  それを片手で受け止めながら叶多の顔を覗き込むと、蒼白な顔に大きな瞳が潤んでいるようにも見える。 「ごめんなさい」  素直に謝罪を唇に乗せる叶多の身体を膝から降ろし、隣の椅子に座らせた須賀は、役員が皆退室したのを横目でチラリと確認してから、シャツの合わせ目に指を伸ばしてボタンに手を掛け外し始めた。 「やっ、やめてください」 「動くな」  弱々しい拒絶の声に低く一言そう命じれば、抵抗しようと動いた腕はピタリと動きを止めるけど……歯の根が合わなくなる程酷い震えは全く収まらない。  全てのボタンを外して脱がせ、中に着ていたタンクトップの肩の部分をずらしてやると、小さな印はまだ腫れていたが、炎症までは起こしていないようだった。 「これは……俺と、お前を診た医者しか知らない」 「え?」 「佐野は知ってるだろうがな。御園に付けられたんだろ?」 「ち、違います」 「お前……馬鹿だな。どうして何も見てないし、聞いてもいない筈なのに、御園じゃないって分かるんだ?」 「あっ」 上げ足を取ってそう尋ねると、ハッとしたように瞳が開かれ、みるみる顔が青くなる。  そんな叶多の様子を見ながら、この状況での犯人なんて御園以外にあり得ないから、そんなに気に病む必要はないと内心須賀は思ったけれど、教えてやる気はまるでなかった。

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