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「でも叶多……顔色が凄く悪いよ。連れてってあげるから、保健室で少し休もう」
「僕は大丈夫だから……」
「いいから行こう。悪いけど……叶多の大丈夫はあてにならない」
「……分かった、ごめん」
真っ直ぐ自分を見下ろしてくる心配そうな瞬の視線に、それ以上は拒めなくなって叶多はゆっくり立ち上がる。
「じゃあ、俺は戻るから」
その様子を見ていた伊東にポンと優しく肩を叩かれ、
「ありがとうございます」
と、頭を下げて礼を告げると、目を僅かに眇めた彼は、
「礼なら瞬に言って」
と答え、軽く瞬に手を振ってから教室を後にした。
「行こう、叶多」
「うん……瞬、ありがとう」
そっと叶多を気遣うように肩に手を添え歩き出す瞬に、つられて足を踏み出しながら、彼にもきちんと礼を言う。
「気にしないでいい。友達だろ?」
それに答える瞬の笑顔が、今の叶多には眩しくて……思わず視線を逸らした叶多は、閉じた教科書を机の中に仕舞うのを、この時すっかり忘れていた。
「大丈夫だよ、会長は来ない」
叶多が動揺している理由を須賀の事だと思ったのか……廊下に出た所で瞬からそっと小さく耳打ちされて、胸の奥の方からジワジワ罪悪感が芽生えてくる。
―― ダメだ。
「瞬、あのさ……」
唯一信用出来る彼にまで嘘を吐いてはいけないと……思った叶多はさっきの事を伝えようと口を開いた。
「どうして……伊東…さんが来たの?」
だけど、直ぐには迷いが断ち切れず、どう話せば良いかも分からず、疑問に思っていた事が先に口を突いて出てしまう。
「俺が連絡した。もし力で勝負したら負けるって分かってるから、授業受けるふりしながら、すぐ来いってLINEしてた。佐野にはバレてたみたいだけど……頼りなくてごめん」
「そんな事ない。瞬がいてくれなかったら、僕、この学校でずっと一人だった」
転校してからこの数ヶ月、どれだけ彼の存在に救われたか分からない。上手く言葉には出来ないけれど、その気持ちだけは本当だった。
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