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「ゲームっていうのは……二十年くらい前に廃止された、明倭学園との対決。っていうか、交流を目的とした遊びだったって聞いてる。当時は双方の学校に選ばれた三十人の生徒を送って、学校の何処かに居るターゲットを早く捕まえた方が勝ちってルールだったらしい。守る生徒も三十人っていうフェアなゲーム。勝った学校は負けた学校に、一つだけ要求を言える。もちろん法には触れないっていう条件があったけど、権力があればその辺はどうにでもなる……確か、何か大きな問題が起こって廃止になったって聞いてる」
「そうなんだ。でも、無くなったんならどうして……」
「叶多が転校してきてすぐ、御園から会長に手紙が届いた。そこに、叶多を返すようにって書いてあったらしい。そんな事は出来ないと突っぱねたら、ゲームをふっかけられたって話だ。ターゲットを叶多にして……ね。ただ、俺はそれだけじゃ無いと思ってる。会長が、そんな安い挑発に乗るとは考えられないから、多分裏に何かある」
そこまで一気に話したところで、瞬はコクリと唾を飲み込み、理解出来ないという顔をしてる叶多に「平気?」と声を掛ける。
「うん、大丈夫。でも……唯人がそんな事するなんて、僕には信じられない」
「だろうね。彼とはどんな関係?」
「僕は、物心がついた時から、唯人の側で、唯人の為に働くのが、当たり前だと思ってきた。父が、唯人の父親の秘書だったから……」
「そうだったんだ。で、叶多はこれからどうしたい? 御園の側に戻りたいって言うなら、出来る限りのことはする」
そう告げた途端、叶多の顔が僅かに陰りを帯びたのを、瞬は見逃さなかった。
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