156 / 301

34

 そして、何の事かと尋ねる(いとま)も叶多に与えず、鎖に繋いで陵辱したのだ。 『お母さんも、財産の管理と叶多の養育権を私に委任した。他に方法は無いだろう?』 と、ニヤリと口を歪ませて。  それから、春休みに入る直前の一週間……食べる物もほとんど与えず、逆らえば、容赦なく鞭や蝋燭を使い、何も知らない叶多の身体を無惨に彼は貫いた。  ―― 思い……出したくない。  小型犬用の首輪を付けられ、餌用の器に入った水や食事を手を使わずに食べるように強要され、拒否すれば……一本鞭で至る所を打ち付けられる。 『蓮も、こうされるのが好きだった。分かってる……本当は嬉しいんだろう? お父さんに似て淫乱な子だ』  ―― ちがうっ、僕は淫乱なんかじゃ……。  幼い頃から見ていた筈の、彼の顔が別人に見えた。  違うのだと、こんな事は望んでいないと何度言っても、無視され打たれ続ける内に諦めが胸を支配した。 『ちょっと出掛けるけど、いい子にしてるんだよ』  数日が経過して、精神的にも体力的にも限界だった叶多の頬を、優しい手つきで撫でながら……焦った様子で彼が告げたのが残っている最後の記憶。  体中、いたる所が熱を帯び、痛いのかどうなのかさえ分からないくらい、叶多の心は麻痺していた。  思えば……あの時自分を救い出したのが、須賀の父親の関係者だったのかもしれない。  なぜか病院で目覚めた叶多は、何日かの療養の後、母親から須賀の父親の話を初めて耳にして、きっと神様がどこかで見ていて、助けてくれたのではないか……と、心の底から感謝した。  どうやってあの部屋から、自分は脱出出来たのか?  唯人の父の明弘は、今頃どうしているのだろうか?  考えてみても全く訳が分からない事ばかりで、だけど、誰からも聞かれないのに、自ら起こった事を話すなんて出来やしなかった。  当分の間は毎晩悪夢にうなされ眠れなかったし、いつまた彼が現れるかも知れない恐怖に叶多は怯え、見えない影に怯えながら、ホテルの部屋で毎日を過ごした。

ともだちにシェアしよう!