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 ―― でも、この学校に来て、友達が出来て……。  変われるかもしれないと、思った矢先に須賀が目の前に現れて――― 。 「ゲームの話、久世から聞いたんだってな」 「……っ!」 「別に怒ってない」  肩に回された須賀の指先が耳朶へとツッと触れ……驚いた叶多はビクリと小さく体を震わせる。 結局……気分が悪くなった叶多は、瞬に促されるままベッドへ横たわり、次に目を覚ました時には傍らの椅子に須賀がいた。  どうしてなのかは分からなかったが、聞けるような立場じゃない。  そこから二人で寮へと戻り、シャワーと軽い食事を済ませると、「ここに座れ」と須賀の座るソファーの隣へ呼ばれたのだ。  もちろん叶多は戸惑った。  聞き間違えだと思った叶多が、いつものように口淫しようと足元に跪こうとすると、 「今日はいい」 と、鼻で笑われて顔に熱が集まった。  だからといって何を話す訳でもなく、珍しく点いたテレビを見ながら、物思いに耽っていたが、突然話し始めた須賀が、瞬との会話の内容までもを把握していて叶多は驚く。 「学校でなら話していいって言ったのは俺だ。だから、お前と久世が何を話そうが構わない。今回提示されたゲームは、期日にお前を手元に置いた方が勝ちって内容だ」 「どうして、話の内容……」 「久世から聞いた。アイツ、俺が何も説明しないのが悪いって……偉そうに説教しやがった」  チラリと横目で須賀を見遣ると、まるで叱られた子供のように、眉根を寄せて唇の端をほんの僅かだが下げていた。  彼のそんな姿を見たのは勿論初めてだったから……拗ねているようにも見える表情に、叶多は唖然としてしまう。 「何だ? 変な顔して」 「いえ、別に……」  彼自身に全くその自覚は無いと悟った叶多が、言葉を探して口ごもると……覆い被さるように体勢を変えた須賀がまじまじと見下ろして来た。 「俺は全く受ける気なんて無かった。バカバカしい……何でお前みたいな転校生の為に、動かなきゃならないのかって……だけど」  そこまで話した所で須賀は言葉を止めて叶多を見詰め、苦い表情を浮かべてから、額にフワリとキスを落とす。

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