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  ***  終業式が終わったあと、叶多の母の見舞いには、父親が行けないからと須賀が一緒についてきた。  聞けば、叶多自身は気づかなかったが、校外に出かける時には常に数人の護衛がついているらしい。 「今日、見舞いの後……迎えに来るんだろう?」  そして……病院に向かう車の中で須賀が放ったその一言に、知られているとは思いも寄らずにいたから叶多は驚いた。 「あ、それは……」 「別に怒ってる訳じゃないから……震えるな」  肩に回された腕に身体を強い力で引き寄せられ、そう耳元で彼に告げられても、信じられなくて叶多は華奢な身体をビクリと強ばらせる。 「行きたければ、行けばいい」 「な……んで?」  勇気を出した問いかけに、答える言葉は無かったけれど、代わりに須賀が顎を掴んで唇にキスを落としてきた。  ―― どうして?  常ならば……知られてしまった時点で酷い仕打ちを受けていた筈だ。  これまで須賀は事ある毎に、何か理由を付けては叶多を弄ってきたのだから。 「傷、これ以上増やすなよ」  どこか優しげに響く声。  何故今頃になって急にと叶多は不思議に思うけど、やはり言葉は喉に貼り付いて音にする事は出来なかった。  少し優しくされた位で彼への恐怖は薄まらない。  もしかしたら、これも何かの罠ではないかと思えてくるが、ここ数日の彼を思い出すと、胸の奥底が鈍く痛んだ。  一緒に起きて、食事をして、学校へ行って……帰りには、生徒会での仕事を少し手伝うようになっていた。部屋に戻ればソファーに座り、一緒にテレビや映画を見た。  その間、一切の性行為を彼は強要しなかった。

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