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  ***  ―― ここは、どこ?  目を覚ました叶多が視線をゆっくり動かし見回すと……柔らかな光が射し込む広い部屋の中だった。 「叶多、起きた?」 「あっ……唯?」  頭上から響いた声の方へと首を動かすと、ベッド脇にある椅子に座った唯人の姿が視界に映る。 「唯、ここは一体……」 「叶多を守る為なんだ。ちょっと窮屈かもしれないけど我慢……できるよね?」  額にそっと触れた掌が、ひんやりと冷たく感じた。  最後に彼の姿を見てからまだ半年も経っていないのに、懐かしさがこみ上げるのは……その間に叶多を襲った数々の出来事のせいだ。 「窮……屈?」  そこへきて、初めて叶多は足に僅かな違和感を覚えた。  その正体を確かめようと、身体を捩って起きようとすると、制止するように唯人の指が喉仏へと軽く触れる。 「まだ薬が抜けてないから、動かない方がいい。期日までの一ヶ月、それが済んだら自由になれるから……ね」  穏やかな……以前と変わらぬ綺麗な笑みに、状況も飲み込めないまま叶多はコクリと頷いた。幼い頃から唯人に従い、彼の言うことに間違いは無いと信じ続けてここまで来たから、疑うなんて思いも因らない。 「あとでゆっくり話をしよう。今はまだ、疲れてるだろうから、もう少し……寝てていい」  優しい声音でそう告げながら、立ち上がった唯人が叶多の頬を撫で……額にキスを落としてきた。 「……なっ」  一緒に過ごした長い間に、こんな事など無かったから、叶多が驚き声を上げると、クスリと笑った唯人はそのまま掌を使い瞼を覆う。 「何も考えなくていい」  視界を断たれた暗い世界に、大切な人の紡ぐ言葉。この声に……従うのが当然なのだと叶多は良く知っている。

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