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「ゆぃ…やめ……あぅっ」 「勃ってる……気持ち悦いんだ」  声が届かなかったのか……小振りなペニスを優しい手つきで包み込むように掴んだ唯人が、一旦胸から唇を離し、独白気味にそう呟く。  それから再度胸の尖りへチュッと強く吸いつかれ、硬くしこってしまったそこへと犬歯を立てられ甘噛みされれば、感じた事も無い程に強い愉悦が背筋を突き抜けた。 「あっ……あぅっ!」  ピクピク身体が痙攣を起こし胸が激しく上下する。  幼い頃から唯人の事をずっと慕って来たけれど、その感情に邪な物は全く潜んでいなかった。だから、今の叶多は驚くばかりで、感情も思考も全く正常に機能していない。 「ああ、もう達ったんだ。叶多はちょっと(こら)(しょう)がないのかな」 「や……ゆ…いっ」  穏やかだけど熱を持たない唯人の声に、叶多の心を支配したのは恐怖にも似た感情だった。  彼の事は幼い頃から良く知っていると思っていたのに、まるで(もや)がかかったように今は全く分からない。  そして―― 。 「……あれ?」 「あっ、やぁっ」  萎えたペニスから唯人の指が離れていったその瞬間、自分の身体を襲った異変に絶望的な気持ちになった。 「気持ち悦過ぎて、漏らしちゃった?」 「子供みたいだ」と喉で笑った唯人が叶多の上半身を、背中を支えて引き起こす。 「あっ……あぁっ」 「大丈夫だよ……俺は悠哉とは違うから、こんな事じゃ怒らない」  力が上手く入らないから、シーツに染みを広げる液体を止められず……唯人に背中を預ける形で、自らの痴態を瞳に映す事しか出来なかった。 「や…なん……」  ―― どうして? 「汚れちゃったから、身体を洗おうか……ん、叶多?」  ―― 唯は、本当に怒ってるんだ。だからこんな……。  急に身体を起こされたせいで血の気が引いてしまった為に、酷い眩暈が叶多を(さいな)み視界が急激に狭まっていく。 「…… 薬が強過ぎたか」  意識が途切れてしまう寸前、冷酷な響きを持った声が聞こえた気がしたが……今の叶多にはそれを突き詰めて考えられる余力は残されていなかった。

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