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  ***  意識がまるではっきりしない。  だけど身体は与えられている快感を常に掬い取り……短いスパンで絶頂を迎え、それが継続している状態。  毎日のようにあてがわれている注射器の意味を考える事も、まるで狂ってしまったみたいに人が変わった唯人のことも、今の叶多には考えることが酷く困難になっていた。 「ふっ…くぅ」  大抵、起きるとベッドに一人で寝ている。  眠っているというよりは、意識を無くしているという方がしっくりと来る状況なのだが、それすらももう分からない。  ただ、起きてからの僅かな間は何もされないという事だけは、反芻される毎日の中で何とか叶多も覚えていた。  ―― トイ…レ。 「っ……」  ヨロヨロとふらつきながらもベッドの下へと足をつき、いつものように部屋の片隅へと備えられた便器の方へ、叶多はゆっくり歩を進める。 「くっ……うぅ」  大抵そこまで辿りつけずに途中で粗相をしてしまい……いつの間にか側まで来ている唯人に見られてしまうのだけど、それについても何ら疑問を持たなくなってしまっていた。  それからの流れはいつも同じで、唯人の手により口枷が取られ、与えられるまま食事を摂って、彼の声が導くままの体勢を取って貫かれる。  それが終わると後孔に何か滑りを帯びた液体を注がれ、栓をするようにバイブやローターでアナルの中を埋められた。 「うぅっ」  案の定、数歩進んだところで叶多の身体はグラリと大きく揺れ、タイル張りの冷たい床へと崩れるように蹲る。  ―― イヤだ。  何が嫌なのかすらももう……明確には分からない。  ただ、身体の奥から湧き出す火照りと、強い尿意がない混ぜになり、叶多はタイルに爪を立てると、そこをガリガリと引っ掻いた。  ――たす…け……て。  助けを求める相手は既に唯人しか浮かばない。 「ふぐぅっ……」  口枷から零れた唾液が顎を伝ってタイルに垂れ、抑えきれない欲求のままに叶多が下肢へと手を伸ばした時、どこか遠くで扉の開く音が聞こえたような気がした。

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