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「んっ…ゔぅっ」  だけど、今の叶多の中にはそれを気に出来るだけの余裕もなく、縮こまっているペニスを掴んでそれをゆるゆると扱きだす。  疲労の為か反応はしないが、媚薬によって完全に身体を支配されている叶多にとっては、そんな事より快楽を追うことの方が大切だった。 『犬みたい』  いつもは大抵この辺りでそう唯人から声が掛かるのだけど、今日はまだ側に来ていないのか、彼の声は聞こえない。  それをおかしいと思う感情も叶多の中には生まれないけれど、突然伸びた大きな掌に優しく頭を撫でられたから、通常とは違う接触にピクリと身体を震わせた。 「あ……うぅ」 「ごめんな」 この声は知っている。だけど誰だか思い出せない。 「ちょっと我慢しろ」 「んっ……んふぅっ」 いきなり……自慰をしていた手を掴み取られ、イヤイヤと首を何度か振ると、万歳のように引き上げられて声の主と視線が絡んだ。 「ふ……んぅ」  視界に映り込んだのは、威圧感のある鋭い視線と、見覚えのある精悍な顔。 「お前は、望んでここに居るのか?」  低く良く通る真摯な声で、そう問われた叶多の身体は一瞬にして凍りつく。 「ふっ……うぐっ」  同時に太股(ふともも)がジワリと濡れた熱を持ち、何かが伝い落ちるけど……自分が漏らしてしまった事にも気づけない程に混乱していた。 「そんな訳、ない……よな?」 「話はあとにして。そろそろヤバい」 「分かった」  聞こえたこちらも知っている声に答えた彼が手を離し、背後から降ってきた布によって身体をスッポリ包まれる。 「っ!」  そして、バチンと大きな音が聞こえたと同時に視界が遮断され……身体がふわりと宙に浮いた。  ――な……に?  何が起こっているのかすらも、分かっていない叶多だが、それでも今のこの状況が、いつもと全く違う事だけは流石に肌で感じ取った。 「……ごめん」  再度謝罪が鼓膜を揺らすが、許容範囲を越えた出来事に頭がついていけなくて……それよりも今は、疼く身体をどうにかしたいという本能が、叶多の理性を凌駕(りょうが)する。

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