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「蓮は、高校時代いつも御園が側には居たけど、クラスでは人気者だった。大学になって学部が変わってしまったのと、御園のガードがきつくなったから、僕はあんまり絡めなくなったけど、連絡だけは取り合ってた。須賀の父親、雅志と知り合ったのも、きっかけは蓮なんだ」
懐かしそうに目を細め、一希は何度か瞬きをする。
それは……友人の早過ぎる死に、思いを馳せてのものだったけれど、朦朧としている叶多にはそれを読み取る事が出来なかった。
「悠哉の事も、子供の頃から知ってる。もちろん智也の事もね……彼等のしたことを擁護するつもりは無い。君には本当に申し訳ないことをした。僕が謝って赦される事じゃないけど……」
――ゆう……や?
神妙な表情をして真摯に語りかけてくる一希に、ぼんやり視線を向けながら……叶多は頭の中で無意識に須賀の名前を反芻する。
「きっと、雅志もこれを知ったら……あっ」
彼の発する言葉がほとんど頭に入ってこない状況の中、話している一希の背後でドアが数回ノックされ……振り向く彼につられて視線をそちらに向けてしまった叶多は、次の瞬間瞳に映った人物を見て、身体をビクリと硬直させた。
「怖がるから、お前は来るなって言ったろう」
「一希さんは治療してくれたらそれだけでいい。ソイツは俺の従者だ」
「悠哉の気持ちは分かるけど、今はまだ早い。もう少し彼が落ち着くまで……」
「……食事が冷める。それに、一希さんはそんなこと言える立場じゃないだろ?」
珍しく……悠哉の顔に僅かに滲んだ不貞腐れた表情に、深いため息を吐いた一希は、椅子からゆっくり立ち上がり、「大丈夫、彼は何もしないから」と、蒼白になった叶多の方へと困ったような笑みを見せる。
本来なら、悠哉の父に全てを伝えて叶多を保護して貰うのが――大人としての責務なのだと一希自身も分かっているが、それを出来ない深い事情が今の彼の中にはあった。
「三十分……ドアの外で待機してる」
悠哉は何もしないだろうが、そう告げることで多少なりとも叶多が安心すればいい。
伝えたい当の本人に声が届いているかは微妙だったが、一希は悠哉に目配せすると、彼の傍らを通り抜け……一旦部屋から廊下へと出た。
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