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 *** 「飲め」  まず飲み物が差し出され、射竦(いすく)められたように動けない叶多がカタカタ震えていると、悠哉は小さく息を吐いてから、設えられた小さなテーブルへ手に持っていたトレーを置いた。 「……っ!」  そして、もう片方の手に持っていたストロー付きの容器も置くと、叶多の体に掛けられているシーツで身体を包むようにしてそっと上体を抱き起こす。  直接肌に触れないようにと気を使っての行為だったが、そんな事には気づけないから震えは更に大きくなった。 「これくらいでいいか」  片腕で身体を支えながら、ベッドの上に置かれたクッションを幾つか重ねて背もたれを作り、そこへ叶多を寄り掛からせると、倒れないかを確認してから再度飲み物を差し出してくる。 「……何も、入ってないから」  唇をツンとストローがつつき、思わず上げた視線の先に、逆らってはいけない相手がいる事だけは分かったから……恐怖に竦む体を動かし叶多は口を薄く開いた。  そして……怖ず怖ずそれを一口飲み込むと、乾いた喉はもっとと欲する。  実際、叶多自身は分かっていないが、二日間点滴だけで眠って過ごしていたのだから、当然喉は乾いていたし、身体も相当弱っていた。 「っ!」  だけど、嚥下するにも喉が痛んで、すぐに(むせ)て咳き込んでしまう。 「大丈夫か?」  布越しに、背中をそっと摩る掌に、どういう訳か胸がドキリと脈を打つ。  ここ数日の記憶は無いが、労るような掌の動きに何故か僅かに落ち着いた叶多は、次に悠哉が差し出してきたスプーンに乗った白粥を、少しずつ……ゆっくりだけれど咀嚼(そしゃく)し飲み込むことができた。 「もういいのか?」  何回か食べた叶多が小さく首を横に振ると、器を横へと置いた悠哉が、低いけれども柔らかい声音で聞いてくる。

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