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「飲め」
まず飲み物が差し出され、射竦 められたように動けない叶多がカタカタ震えていると、悠哉は小さく息を吐いてから、設えられた小さなテーブルへ手に持っていたトレーを置いた。
「……っ!」
そして、もう片方の手に持っていたストロー付きの容器も置くと、叶多の体に掛けられているシーツで身体を包むようにしてそっと上体を抱き起こす。
直接肌に触れないようにと気を使っての行為だったが、そんな事には気づけないから震えは更に大きくなった。
「これくらいでいいか」
片腕で身体を支えながら、ベッドの上に置かれたクッションを幾つか重ねて背もたれを作り、そこへ叶多を寄り掛からせると、倒れないかを確認してから再度飲み物を差し出してくる。
「……何も、入ってないから」
唇をツンとストローがつつき、思わず上げた視線の先に、逆らってはいけない相手がいる事だけは分かったから……恐怖に竦む体を動かし叶多は口を薄く開いた。
そして……怖ず怖ずそれを一口飲み込むと、乾いた喉はもっとと欲する。
実際、叶多自身は分かっていないが、二日間点滴だけで眠って過ごしていたのだから、当然喉は乾いていたし、身体も相当弱っていた。
「っ!」
だけど、嚥下するにも喉が痛んで、すぐに咽 て咳き込んでしまう。
「大丈夫か?」
布越しに、背中をそっと摩る掌に、どういう訳か胸がドキリと脈を打つ。
ここ数日の記憶は無いが、労るような掌の動きに何故か僅かに落ち着いた叶多は、次に悠哉が差し出してきたスプーンに乗った白粥を、少しずつ……ゆっくりだけれど咀嚼 し飲み込むことができた。
「もういいのか?」
何回か食べた叶多が小さく首を横に振ると、器を横へと置いた悠哉が、低いけれども柔らかい声音で聞いてくる。
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