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「君は何も悪くない。ゆっくり元気になればいいから」
パンプキンをベースにしてあるポタージュは少し甘味が強いが、胃からジワジワ体を温め、最初は渋々といった感じでなんとか口を開いた叶多も、最後には次を求めるように自ら口を開いていた。
―― 不思議な人だ。
まだ出会ったばかりなのに、そんな気がまるでしない。
優しい笑顔を向けられれば、この人ならば信用してもいいのじゃないかと思えてしまう。
「もっと食べる?」
嬉しそうに空の器を見ながら尋ねてくる彼へと、叶多が小さく頷いた時、まるで見計らったかのように部屋のドアが背後で開いた。
「あ、ちょっと……」
「……っ」
悠哉の姿を瞳に映して体をピクリと震わせると、慌てたように一希が立つから、思わず服の裾を掴んだ。
「え? 叶多君、どうしたの?」
「……」
自分でさえ理解できない突発的な行動だったが、戸惑ったような一希の声に、「大丈夫」の意味を込め、叶多は小さく一つ頷く。
怖くない訳ではない。
あんな夢を見た後だから羞恥も湧いてくるけれど、今彼を拒絶してしまったら、いけないような気がしていた。
それは……理屈では上手く言えないような、心の小さな変化だったが、まるで何かを悟ったように、一希は微笑み叶多の頭を軽く撫でてから振り返る。
「おかしな事、するなよ」
「……しない」
無愛想に答えながら歩み寄ってきた悠哉に向かい、「怖がらせるな」と一言告げて一希が部屋から出ていくと、ホッとしたように息を吐いてから彼は椅子へと腰を下ろした。
「食べれるか?」
「……?」
彼が手にしていた器から、スプーンで何かを掬ってこちらに差し出すが、何だか分からず戸惑っていると、擦った林檎だと説明されて叶多は素直に口を開く。
「なんか、餌付けしてるみたいだ」
喉越しが良く食べやすいそれを何度か口へと運ばれて、勧められるまま食べていると、そんなことを呟いたから、叶多は思わず咽てしまった。
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