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「そんなに緊張しなくていいよ、心理テストじゃないんだ。ただ、君は随分と長い間、外を見て無かっただろう? 難しい事考えるのはあとにして、ちょっとぼんやり空でも眺めた方がいいって思う。人間、閉鎖された場所にいると、どうしても気持ちが塞ぐからね」  ―― 確かに……そうかもしれない。  唯人の元へと行ってから、一度も外へは出ていなかった。  ここで初めて目覚めた時、空を見たような気もするけれど、その辺りの叶多の記憶は正直かなり曖昧だ。 「叶多君が元気になるまで、僕と悠哉がサポートする。それでいい?」 「っ?」  確かめるようにそう尋ねられて叶多が視線を彷徨わせると、「叶多君は、悠哉の事を知りたいって……思い始めてるんじゃないのかな?」と、穏やかながらも核心を突いた言葉が彼から返ってくる。  ―― 僕が、彼を? 「まあ、さっきも言ったけど、難しい話はあとでいいから。友達に見られたくないなら、そうするしかない。僕も常にはいられないし、使用人にはさせたくないしね」  これじゃ、質問じゃなくて強制だね……と、続いた言葉に思わず叶多は頷いたけれど、いたたまれない気持ちになって、たまらずすぐに視線を窓から見える空へと向けてしまった。  ―― 空が……青い。  室内は適温だけれど室外はかなり暑いのだろうと、遠くに見える入道雲を眺めながら叶多は思う。  ―― 僕は……。  一体どうしたいのだろう? 『悠哉の事を知りたいのでは?』と、問われて胸がざわついた。  これまでの叶多は常に受動的な立場にあって、自分の気持ちを言葉にするのは無駄な事だと諦めていた。  時が過ぎるのを待ってさえいれば、いつかは終わると思っていたし、『仕方がない』『どうにもならない』と、先回りして考え過ぎて、結果想いを声には出さずに沈黙を選んできた。  だけど、当の本人はそんな自分の心の有り様に気付いていない。  ただ、『質問じゃなくて強制だね』と、先程一希に言われた時、選択肢の無いその状況に内心僅かに安堵していた自分自身に気がついて……言いようのないその感情を逃すかのように、シーツを強く握りしめ、浅く息を繰り返した。

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