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ただ、『まだ立てないようなら入れてあげるよ』と言われた時、思わず大丈夫だと断り、彼に不審に思われないよう精一杯の力を出して立ち上がり、一人で歩ける姿を見せた。
―― 見られたく、なかった。
既に見られてしまっているが、自分の体に付けられている様々な痕を、人の目に晒すのが心の底から嫌だった。
だから叶多は頑なに大丈夫だと言い張った。
それに、いくら気を張ったとはいえ一希の前では歩けたのだから、一人でも何とかなると先刻は思っていた……けれど。
「確かに……一週間も入れないと、気持ち悪いよな」
陰りを帯びたその表情から、何かを読み取ったかのように悠哉は低く呟くと、突然叶多の肩を引き寄せ膝下に腕を差し入れる。
「っ!」
「風呂、入りたいんだろ?」
以前より更に痩せた体をひょいと抱き上げてそう告げると、それ以上は何も言わずに悠哉は部屋を移動して、備え付けてある浴室のドアを片手で開いて中へと入った。
「っ!」
「大人しくしてろ」
「……」
ここまで来れば一人で出来ると叶多は悠哉へと告げようとするが、そんな努力は一瞬にして無駄な物へと姿を変える。
「っ!」
脱衣所に備え付けられている小さなソファーにそっと身体を置かれた刹那、彼の腕が服へと伸びて、抵抗らしい抵抗も出来ないままに着衣を全て剥がされた。
そして、バスタオルで身体を包まれ、再度悠哉に抱き上げられて、浴室内へと連れて行かれる。
「っ!」
それほど大きく無いバスタブは既に泡で満たされていて、ゆっくりとそこへ叶多を入れると、悠哉は着ているシャツの裾を捲りながらシャワーを持った。
「熱かったか?」
そう悠哉に尋ねられ、熱くは無いから首を振ると、
「頭、ここに置け」
と、バスタブの縁を指さして告げてくる。
いつものように威圧感のある抑揚の無い低音に、竦んだ叶多が動けずにいると、小さく舌を打つ音が聞こえ頭を軽く掴まれた。
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