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「そんな顔、するな」  今、自分がどんな表情をしているのかは分からなかったが、そんな風に言われるのだから、きっと情けない顔なのだろうと思って謝罪しようとすると、突然視界がグルリと回って柔らかい布団に背中が埋もれた。 「お前、話せない方が饒舌だな」  ベッドの上に横たえられたと分かった叶多は息を吐くけど、覆い被さるように乗り上げた悠哉に驚き目を見張る。 「っ!」  同時に外から雷鳴が聞こえ、溜まらず耳を塞いだ叶多が、小さく体を丸めようとすると、下半身を強く引かれて直に空気が肌に触れた。 「……っ!」 「そのまま耳塞いで、目ぇ閉じてろ」  何が起きたのかすぐには理解できなくて……思わず悠哉の方を見遣ると、状況には似つかわぬ程に落ち着きのある声が鼓膜を揺らし、どうすればいいか分からなくなるが叶多は小さく首を振る。 「辛いだろ?」  そんな叶多を宥めるように悠哉は低く囁くと、剥き出しになってしまったペニスをなぞるように掌で触れた。 「……っ!」  ―― なん…で?  そこで初めて自分の体の状態を知ってしまった叶多は、続いて聞こえた雷の音と激しい羞恥に顔を掌で覆い隠す。  確かに……風呂に入った辺りからずっと体が火照ってフワフワしていた。だけど、甘く疼くこの感覚は、久しぶりの入浴が気持ちいいせいだと思っていた。 「お前のせいじゃない」  低く囁く悠哉の声。  確かにこれは薬物までを使用され、快楽を注ぎ込まれ続けた後遺症のようなもので、叶多自身の意志ではないし、言うなれば叶多は被害者だ。  だが、そんな慰めの言葉なんかじゃとても救いにならないくらいに叶多の頭は混乱し、咄嗟に脚をバタつかせて悠哉の腕から逃げようとした。 「っ……ぅ!」 「逃げるな」  太股を強い力で掴まれそれを左右に割り開かれれば、内股にいくら力を込めても閉じる事など叶わなくなる。 「っ!」 「そのままにしてろ」  更に、響いてきた悠哉の声が頭の中をグルグルと回り、彼の命令に慣らされた身体は、片方の手が離れていっても動かすことが出来なくなった。

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