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 ―― どうして?  彼が怖い筈なのに、引き留めたいと願うのか?  ―― 僕は……。  こんな風になってしまった自分自身が怖かった。突然豹変してしまった悠哉に頭が混乱したし、タイミング悪く外では叶多の嫌いな雨が降っていた。 「雷が怖いのか?」  それだけが理由では無いが、うまく考えが纏まらず……尋ねてくる悠哉の声に頷き指に力を込めると、息を吐き出した彼は再びベッドへと乗り上げてくる。 「……そうか」  子供じみた恐怖心を嘲笑う事もせず、彼はそのまま腕を伸ばすと、薄掛を引いて叶多の身体にフワリと掛けた。 「さっきは……悪かった」  ポツリと紡がれた謝罪の言葉。  最初から状況を伝え説明すれば良かったのかもしれないが、そうすることで叶多が自身を嫌悪するのは目に見えていた。  ならば「自分でどうにかする」と本人が言い出したりしない内に、全て終わらせてしまえばいいと悠哉は考え動いたのだが……最終的には叶多の色気に煽られてしまったのだから、言い訳のしようもない。 「……」  そんな悠哉の心境など知りもしない叶多だから……真摯な彼の声音にただ頷く事しかできなくなるが、理解はあまりしていなかったし呼吸もかなり乱れていた。  ―― あつい……身体が。 「辛いよな」  顔に触れてきた冷えた掌に頬をすり寄せてしまったのは、身体を侵す熱の塊がかなり大きくなっていたから。  ―― たす…けて。  吐き出す息が酷く熱い。次々襲う淫靡な感覚にたまらなくなってしまった叶多は、悠哉を掴んでいた手を離し、薄掛の中へ潜り込ませて自分のペニスに触れようとした。  ―― ダメ……なのに。  一度は拒んでみたものの、結局のところ抑えが利かない自分に心底絶望しながら、その手を止めることが出来ない。 「っ!」 「そのまま……続けろ」  すると突然身体をギュッと抱きしめられ、叶多が一瞬動きを止めると、耳元に低い声が響いた。  ―― この…まま?  冷静に考えられる思考能力があまり残っていない叶多は、背中を擦る大きな掌にホッと小さな吐息を漏らし、昂っている自分のペニスを両手を使って握り込む。

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