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  ***    ―― どうして、こんなに……。  唯人が自分に執着するのか分からなくて叶多は惑う。  自分を貫く彼のペニスは、的確に悦い場所ばかりを穿つから、思考は途切れ途切れになるけれど、肩口を噛まれる痛みに意識を集中させることで、まだ均衡を保てていた。 「ふぅっ…んっ」  突かれるたび、爪先や腕が踊るように宙を掻く。  卑猥な道具を使って射精を塞ぎ止められていなければ、既に叶多は何度か達してしまっていることだろう。 「叶多は……俺が好きだろう?」  答えの決まっている問いかけに、何度も大きく頷くと、まるでそれを誉めるかのように、舌先が傷をペロリと舐めた。  ――そんなの……好きに決まってる。  彼の父親の事もそうだが、ずっと慕い続けていた相手を嫌いになれる筈がない。  むしろ、ここまでさせてしまった自分に非があるような気さえしていた。 「俺も、好きだよ」  甘く蕩けるような声音に、いつも違和感を持ってしまう。それは、ずっと一緒にいたから分かるほんの僅かな澱みだった。  ―― 唯が好きなのは……僕じゃない。  それが、誰に向けた想いなのかは分からない。そして、叶多の『好き』もこの場合……恋愛の情では無かった。 「ぐぅっ……んっ」  穿たれる度に喉の奥からぐぐもった音が出る。薄く開けた視界の先に水平線が見えるけど、そんな綺麗な風景でさえ、現実的には有りえないような今の叶多の状況では、心を動かす事も出来ないし、作り物のようにさえ見えた。 「イきたい?」 「……っ!」  ペニスの先を指でつつかれ、声にならない悲鳴が上がる。思考を続ける頭とは逆に、身体は既に限界で、揺られる度に先走りが垂れ革のソファーを汚していた。 「こっち向いて」 「……ンッ」  頷く叶多の身体を持ち上げペニスを一度引き抜くと、今度は向かい合わせになるように体位を変えて挿入される。 「ッ!…んぐぅっ!」 「可愛い」  その衝撃に痙攣し、空で極めた叶多の身体を抱き締めながら唯人が小さく囁いた。そして、ハアハアと荒く息を繰り返す唇へと……噛みつくようなキスをする。

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