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最終章

最終章  判断を誤った。  それをすぐに認められる分析力と潔さは、長所であると言えるだろうが、当の本人からしてみれば、そんな事はもうどうでもいい。  奇策としか言いようのない状況を耳にして、逃げる事はもう不可能だから、唯人は叶多と繋がったまま、海を眺めて奥歯をギリッと噛みしめた。 「悠哉が来てるみたいだけど……どうする?」  報告を受けたスマートフォンを傍らへと無造作に投げ、対面座位の体勢のまま、唯人が低く囁くと……虚ろだった叶多の瞳に分かりやすく正気が宿る。 「こんな姿、見たらなんて言われるだろうな。そのまま……帰っちゃうかもしれないよ」 「っ!」  ほぼ定着した肩の焼印を指でなぞってそう告げると、ビクリと身体を震わせたけれど、逆らったりはしなかった。  先程……窓の外に光った物の正体は、多分偵察機能のついた小型のドローンだったのだろう。  場所の特定にさほど時間が掛からなかった事については、射矢を置いてきたのだから、驚いたりしなかった。だけど。 「まさか……ね」  そこから起こりうる大抵の事態は既に予測できていた。  だから、その全てに防御線を張ることで……タイムリミットまでの間に、悠哉が辿り着く可能性をことごとく潰す指示を出した。  別荘を守っているのはその道のプロ達だ。  敷地自体は狭くは無いが、そこまで広大とはいえない。だけど、高い塀に囲まれていて、正面の門を通らなければ中には入って来られない。  入ったところですぐに掴まり、不法侵入で追い出されるのが関の山だ。そう、思っていたのに。 「……っ!」  扉が開く音と同時に、腕の中で叶多の身体が強張った。  唯人の肩越しに見えたのだろう、動揺したのか華奢な身体がカタカタ小さく震え出す。 「ノックぐらいしなよ。俺は別にいいけど……」 「うっ…んぅっ!」  振り返らずにそう呟くと、唯人は何度か下から突き上げ、緊張からか、きつく締まったアナルの奥へと吐精した。それからゆっくり身体を持ち上げ、叶多の体内(なか)から自身を引き抜く。

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