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「あのさ……瞬」 「何?」  何度か尋ねようしては、その都度はぐらかされてきたけれど、今日はどうしても聞きたくて……叶多は真っ直ぐ瞬を見据える。 「か、会長は……」 「またその話? 俺は知らないって言ったよね」  決して咎める訳でもなく、困ったように微笑んだ瞬は、包帯の端をテープで留めると、そのまま叶多と視線を合わせて小さく息を吐き出した。 「でも、ここは、彼の部屋で、だから……」 「叶多はもう従者でも何でもないって言っただろ? 散々酷い目にあわされたんだから、今はアイツの事は忘れて、自分の身体を治す方に専念しろよ」  一希にしても瞬にしても同じような事を言う。  二学期も始まっているし、生徒会長なのだから、学校では見ているはずなのに、それすら教えてくれない彼らに何故かとても不安になった。  あれほど嫌だと思っていた従者でも無くなったのに、心の中が少しも晴れない。 「――本当に、知らないんだよ。一希さんはともかく、俺は……」  そんな叶多の表情を見て、溜息交じりに瞬が言った。そこまで伝える必要は無いと思ってた……と、付け加え、それから顔を近付けてきて、内緒話のように小声で話し始める。 「新学期に入ってまだ一週間だけど、その間一度も登校してない。体調不良で療養中って話だけど、そんな訳無いだろ? こんな話したら、叶多が心配すると思って言わなかったって訳。あと、一希さんに口止めもされてたし」 「え? じゃあ……どこにいるかも?」 「うん、分からない。佐野も来てないから、射矢なら何か知ってると思ったけど、どういう訳か射矢もいない」 「なっ……」  そんな事があるのだろうかと叶多は一瞬疑うが、瞬が自分に嘘を吐くとは思えないから言葉に詰まった。 「でもさ、正直こんなに毎回聞かれるとは思わなかった。叶多、そんなに須賀に会いたいの?」 「え?」 「だって、アイツのせいで叶多どれだけ苦しんだ? もし、少しでも好意を持ってるとしたら……それは叶多の勘違いだよ。だから、どっちにしても落ち着くまでは会わない方がいい」 「僕…は……」  会いたいとは思っていたが、その感情の名前を考えた事もないから、『好意』という言葉を聞いて心臓が少し音を速める。

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