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「ホントだよ。目的と結果を履き違えられるのは嫌だから、そこは勘違いしないで」 「分かってる、分かってるから……やめっ」  昨晩から長い時間をかけてしつこく(もてあそ)ばれ、プクリと腫れた胸の尖りを指先で摘み上げられれば、痛痒いような甘い疼きに声が自然と上擦った。 「わざとだ」なんて口にしてみても、圭吾との長い付き合いの中で本当はちゃんと分かっている。  初めて身体を拓かれた上、足腰が立たなくなるまで激しく自分を責め立てたのが、動けないようにする為だけの行為だなんて、圭吾に限ってあり得ない。 「嬉しすぎて:箍(たが)がはずれた。辛い?」 「だったら……少しは休ませろ」  太股の付け根に這わされた指を、上から掴んで悪態を吐くと、「もう一回だけ……ダメ?」と囁かれ、恥ずかしげもなく求める圭吾の声音に背筋が粟立った。  ここ数日は頻繁に、叶多の事を相談していた。  理事長から出された指示で、現状叶多と悠哉の二人は朝の僅かな時間だけしか対面できない決まりだったが、毎日叶多と過ごすうち……それでいいのか迷いが生じた。 『多分、理事長は小泉君を思ってそうしたんだろうけど』  俺は違うと思うんだ……と、続けた圭吾は瞬にも意見を聞いてきた。  瞬自身、勘違いだと何度告げても、叶多は頑なに首を横に振る。  自分の気持ちが好意に近いものだという事にすら、気付いていない叶多だから、会えば恐怖が蘇って拒絶するかと思っていたけれど、現実にはそうならなかった。  だから『分からない』と、素直に告げると、圭吾は頷き再度言葉を紡ぎ始めた。 『彼らが完全に打ち解けるのは、時間が必要だろうけど、小泉君の気持ちを優先させるのが、友達の役目じゃないかと俺は思う。違うかな?』  悠哉にはあまり良い感情を持てずにいた瞬だけど……至極真っ当な圭吾の言葉に、叶多の事を一番に考え、小さくだけれと頷き返した。 本当は、一希と連絡が取れなかった訳じゃない。  彼が会合で来られないとの連絡は既に受けていた。だからこそ、叶多のところへ行かなければならないという責任感と、その反対の感情とが、心でせめぎ合っていた。

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