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『分からない』と目を背け、自分の気持ちに蓋をしたまま過ごしていた日々だったけれど、感情の差し引きだけで誰かを好きになる訳じゃないと、今この瞬間本当の意味で理解できたような気がする。
「信じて……」
ゆっくりと確かめるように悠哉の背中へ腕を回すと、叶多は真っ直ぐ彼を見つめて、哀願するかのようによう告げた。すると……瞳を僅かに細めた彼が、「クソッ」と小さく呟くと共に、叶多の身体に覆い被さり、首元に顔を埋めてくる。
「信じる。勘違いでも構わない」
「……っ!」
「嫌なら言え」
吹っ切れたように囁いた彼に喉元へチュッと吸いつかれ、叶多は背中に回した指へと力を込めて頷いた。
これ以上……言葉を交わす事よりも、そうした方が気持ちが伝わるのではないか……と、思ったから。
何より、今の叶多は彼の温もりを感じたい……と、理屈ではなく心の底から強く願い、求めていた。
「あっ……くぅっ」
丁度傷痕の付いた辺りを次々吸われて身体が震える。
それとは別に長い指先が、胸の辺りをゆっくりさすり、凝りはじめていた先端を潰すように押された途端、叶多の口から甘く湿った吐息混じりの声が出た。
***
「んっ……っ、そこ…あぅっ」
目下で喘ぐ叶多の姿に、煽られて急ぎそうになるけれど、悠哉は逸 る気持ちをこらえて丹念に胸の尖りを捏ねる。
「っ……ふぅっ…ん」
背中を掴む叶多の指先にキュッと力が籠もるたび……愛おしさが込み上げてくるのが自分自身にも良く分かった。
「気持ちいい?」
「あっ…ん、うぅ……」
煙草を押しつけられた痕跡の一つ一つに吸い付きながら、悠哉が甘く囁きかけると、頬を真っ赤に染めた叶多が、声にならないと言ったようにハアハアと息を繰り返し、ゆっくりだけど確かに頷く。
「……叶多」
「んぅっ……あっ、やぁっ!」
先ほど初めて呼んだ名前を噛み締めるように唇へ乗せ、乳輪を軽く摘まみ上げてからその中心を指で弾けば、ビクッビクッと数回痙攣してから体の力が抜けた。
「叶多、お前……」
「あっ……や、違っ」
たったこれだけの触れ合いで……達してしまったらしい叶多の下半身へ指を滑らせると、寝衣を纏ったままの布地がしっとり湿ってしまっている。
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