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「ごめん、無理させた」
「そんなこと……」
胸の中へと包み込むように体勢を変えて抱き締めながら、泣き過ぎて朱く染まってしまった目元へ舌を這わせていくと、途端に涙がボロボロ零れて流石に悠哉は動揺した。
「痛かったか?」
「ちがっ、ホッとして、そしたら、涙が出て……ごめんなさい」
必死に言葉を紡ぐ姿に、愛おしさがこみ上げてきて……悠哉が再度「好きだ」と囁くと、何かの化学反応みたいに一気に顔が赤くなる。
「僕、僕も……貴方が……」
『好き』の形に動く唇を瞳に映し……目の奥の方にツンと切ない痛みを感じた悠哉だけれど、グッとこらえて笑みを浮かべると、安堵したように叶多の顔がフワリと綺麗に綻んだ。
その表情に胸が高鳴り、悠哉は叶多の顔のあちこちに、繰り返し……触れるだけの優しいキスを落としていく。
先刻まで、あれだけ酷く降っていた雨も強風も、いつの間にかすっかり止んで、雲の合間から漏れた光が部屋を柔らかく包み込む。
「雨、止んだな」
キスの合間にそう呟くと、叶多はコクリと頷いてから悠哉の背中へ腕を回し、
「ありがとう」
と小さな声で囁いて……既に限界だったのだろう、静かな寝息を立て始めた。
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