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epilogue

【epilogue】 「叶多、こっちだ」  母の見舞いを終えた叶多が、病院の玄関から出て辺りをキョロキョロ見回していると、自分を呼ぶ悠哉の声が横合いから響いてくる。 「……あっ」  来たと時とは違う車の前に立っている悠哉を見つけ、少し首を傾けながらも叶多が傍まで歩いていくと、助手席の窓が静かに開いて見知った友の笑顔が見えた。 「叶多、久しぶり!」 「瞬! ……どうしたの?」  驚きに……思わず声を上げた叶多に、「話は乗ってからだ」と悠哉が後部座席のドアを開く。 「え?あ……うん」  何がなんだか分からないけど、ロータリーに停まったままでは不味いと言われて頷くと……叶多は悠哉に促されるまま後部座席へと乗り込んだ。 「久しぶり」 「伊東……君?」 「何だよ、忘れちゃったの?」  走り出した車の中、バックミラー越しにこちらへ笑みを向けて来る顔は、間違いなく圭吾なのだが様子が大分変わっている。 「忘れてないけど、髪とか、髭とか……」 「そうなんだよ、まるでチャラ男だろ? 大学入ったからって羽目外し過ぎだって言ってんだけど、コイツ全然聞かないんだよ」 「二人とも、どうして……」 「叶多、お母さんの具合、どうだった?」 「あ、うん、あんまり変わらないけど、悪い状況じゃないって、先生が……」  なぜ二人がここにいるのかを聞こうと口を開いたところで、遮るように悠哉に問われ、しどろもどろに叶多は答えた。  前に居た病院での投薬が不味かったせいで、一時は叶多を認識するのも難しい状態だったが、悠哉の父の計らいで、御園系列の病院からこちらに転院してからは、病気自体は完治していないが意識はかなり明確になった。 「そうか、良かったな」 「うん。それで、どうして……二人がここに?」  卒業式で「絶対会いに来るから!」と、堅く握手を交わした記憶は実際それほど遠くない。  今、叶多は高校三年の夏休み真っ只中だが、前の座席に乗る二人は……この春から一足先に大学へと進学していた。

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