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あの出来事があった夏から、学校へあまり行けなくなり……叶多は結局二年生をもう一回やりなおしたのだ。
瞬とは連絡をとっているから、来るなら来るで連絡くらいしてくれれば良かったのに……と、思いながらも尋ねると、こちらを振り向き悪戯っぽく瞬が微笑みかけてきた。
「知りたい? 実は……」
「駄目だよ瞬、須賀に言わせないと」
するとすぐさま伊東に制され、「えーっ、言いたい」と、膨れる彼の顔を見て、叶多はたまらず吹き出してしまう。
「ホント、二人は変わらないね」
「そう? コイツはこんなになっちゃったけど」
「男前が上がったろ?」
「うん、似合うと思うよ」
少し明るい髪の毛も、伊東には良く似合っていると思って叶多が告げたところで、横から伸びた大きな掌が叶多の頭にそっと触れた。
「会いたいって、言ってたろ?」
「え?」
「叶多が久世に会いたいって言うから」
髪をクシャクシャと撫でた掌で、肩をグイッと引き寄せられる。
「それで、須賀から叶多を驚かせようって連絡きて、俺、凄い嬉しくてワクワクしてた。楽しい旅行にしような!」
「旅行!?」
「ああ、叶多、行ってみたいって言ってたろ」
目を丸くした叶多の顔を覗き込むように悠哉が告げ、そういえば……瞬達が先に卒業したあと、取り残されたようで寂しいと言ってしまった記憶や、夏休みの話をした時、旅行に行ったことがないなどと話した記憶が蘇った。
「あ、あの、悠哉くん……ありがとう」
「ああ」
感謝の気持を口に乗せると、短い答えが返ってくるが、決して以前のように冷たく厳しい響きは纏っていない。
この二年間で二人の距離は、だいぶ近くなっていた。
それは互いが無意識のうちに、小さな言葉や異変でさえも、見過ごしたりしないように想い合ってきたからだ。
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