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「ちょっと、ただでさえ熱いのに、二人だけで通じあってイチャイチャすんのやめろよ」
「瞬、オヤジみたい」
「圭吾は黙って運転してろ」
相変わらず軽口を叩き合う二人の姿にホッとしながら、叶多は薄く笑みを浮かべて「二人とも、ありがとう」と、感謝の気持ちを声にする。
「礼を言うのはこっちの方だよ。俺達も会いたかったし」
「特に瞬はね。妬けちゃうくらい心配してた」
「圭吾が妬くとか有り得ないだろ?」
「あっ、あの……」
「大丈夫、じゃれてるだけだ」
謝った方がいいのか分からず叶多が視線を彷徨わせると、耳に心地よい低音が聞こえ、肩を抱く手に力が籠もった。
「……うん」
声に小さく息を吐き出し、叶多はコクリと頷き返す。
二年前の夏以降……叶多自身、そこまで自分が精神的に参っているとは思ってもいなかったけれど、身体の傷がようやく癒えて学校へ通い初めてからも、ちょっとした事で言葉が上手く紡げなくなったり、急な動悸や眩暈に見舞われた。
そんな自分をさりげなく支えてくれたのは、今前にいる瞬と伊東、それから……一希や射矢や佐野に加え、生徒会の面々と――。
―― あと、いつも、必ず傍にいてくれたのは……。
「どうした、酔ったのか?」
「大丈夫、凄く……嬉しくて」
悠哉の顔を見詰めながら、言葉を詰まらせ微笑むと……ホッとしたように息を吐き出した彼が頭を優しく撫でる。
「ちょっと長いドライブになるから、疲れたら寝てろ」
「ありがとう。でも……」
こんなに嬉しい事が起こっては勿体なくて眠れない。
そう……思ったままの素直な気持ちを伝えると、照れたようにはにかんだ悠哉は、運転席から見えないように叶多の顎を軽く掴み上げ、その唇に、そっと優しく慈しむようなキスをした。
終わり
ありがとうございました。
次のページから番外編を上げる予定です。
引き続きお付き合い頂けたら嬉しいです。
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