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「ここ?」
「うん。チェックインは済んでるから、あとは部屋に行くだけ」
『だから、恥ずかしくないだろ?』
と耳元で低く囁けば、耳まで真っ赤に染めた類が、掴んでいる手を握り返して小さくだけれど頷いた。
日本有数の高級ホテルはクリスマスの予約がかなり難しく、スイートとなれば競争率も高いけれど、そこは父親の経営しているグループだから、智也は遠慮なくコネを使った。
けれど、これは自分が類に贈る初めてのクリスマスだから、親の金を使うような情けない真似はしていない。
「すご……い」
最上階の部屋へと入ると、まずは豪華なその室内に類が声を詰まらせる。それから、窓の近くへ足早に近づき、そこからの夜景に釘づけになった。
「綺麗……光が、沢山ある」
「どう? 気に入ってくれた?」
「こんな、いいんですか?」
腕の中に閉じ込めるように体を抱き締め囁くと、こちらを降り向いた彼の瞳が、潤んでいるのが見て取れる。
「いいに決まってる。類はただ、喜べばいい」
我ながら『気障 な演出だ』と、思わなくもなかったが、常に表情の乏しい彼が次の瞬間見せた微笑みに、智也の心の中は温かな感情によって支配された。
***
信じられない気持ちだった。
『年末年始、遊びにおいで』
と、声を掛けて貰えただけで本当に嬉しかったのに、こんな用意までされているなんて、全てが夢なのではないかとつい疑いたくなってしまう。
連れて来られたスイートルームに、豪華なディナーが運ばれて……更に、
『風邪気味だって聞いたから、消化がいい物を頼んでおいた』
と言われたのにも驚いた。
誰に聞いたかはすぐに分かったが、出掛けに見送ってくれた叶多には、一言も言っていなかったから。
類は二十歳 になっているからと、シャンパンを勧められたけど、酒は飲んだ事もないし、智也が二十歳になったとき、一緒に飲めればいいと思う。
「……お風呂、先に、ありがとうございました」
「ん、よく暖まった?」
先に風呂から上がった類が、テレビを見ている智也に告げると、ソファーから立った彼がフワリと体を包み込み、耳の下の辺りに顔を埋めてくる。
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