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「いい匂い。このまま類を食べたいけど、俺も風呂入ってくる。次は一緒に……ね」  首元へチュッと吸いつかれ、それだけで体が跳ねてしまうが、羞恥に顔を赤く染めながら、それでも類は頷いた。 「……もっと……頑張らないと……」  バスルームのドアが閉まるのを見送ると、一人部屋へと残された類は消え入りそうな声で呟き、持って来たバックパックを開いて包装された箱を見た。  会話も自分が言葉に詰まってあまり長続きしなかったし、多分風呂も……類があまりに恥ずかしがるから、気を使わせてしまっている。  以前から格好良かった智也だが、東京に出てからは更にその魅力を増していて、類の心はそんな彼に魅かれていくばかりだが、きっと彼の周りには……自分なんかより魅力のある人が沢山寄ってくるはずだ。 (だって、彼は……)  着替えに紛れたファッション雑誌の表紙へと視線を落とし、類は小さくため息をつく。  そこに写っている人物は、紛れもなく智也だった。 (世界が……違う)  夏休みが終わったあと、同級生が騒いでいたのが類の耳にも入ってきた。  本人に聞きたかったけれど、たまにくる電話でそれを尋ねる勇気はとても持てなかったから、雑誌だけ譲って貰って毎日のようにそれを眺めた。  決して嫌なわけではない。むしろ、凄いことだと類は思う。 (でも、胸が……) 「どうした?」 「あっ、あの……これ」  背後から急に声を掛けられ、類の心臓が大きく跳ねた。  智也から雑誌が見えないように、バッグを閉じて箱を差し出すと、端正な彼の唇の端がゆっくり上がっていくのが分かる。 「クリスマスなので、プレゼントを……ただ、私は、学長のお世話になっている身なので、たいした物は……」 「嬉しい。俺のために、類が考えて用意したの?」 「……はい」  改めて言葉にされてしまうと、とても恥ずかしくなるけれど、彼の言葉に間違いはないから類は小さく頷いた。

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