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類は今、智也の父の計らいにより、特待生扱いで学費や寮費を免除されている。
両親は、智也と唯人の契約によって職を追われることは無かったが、それまで御園が支払っていた高額な学費を出すのはとても無理だった。
類を差し出す見返りとして、定期的に多額の金を受け取っていたらしいのだが、それは結果彼らの生活を潤していただけらしい。
久しぶりに会った時、あまりによそよそしかったのは……多分、恩義のある御園を類が裏切ったせいだろう。
特待生となった時、智也の父は、
「成績も優秀なのだから、なにも気にすることはない」
と言ってくれたけれど、いつか恩を返せればいいと類は心に誓っていた。
「開けていい?」
言われてコクリと頷くと、長い指先が器用に動いてラッピングを剥がしていく。
「これ……マフラーだ」
「すみません。もっと質のいい物を持ってるとは思ったのですが」
「類、そういう問題じゃないだろ。ホント嬉しい、大切にする」
箱から出したマフラーを、巻きながら嬉しそうに笑うから、類も自然と笑顔になった。
ブランド物には疎 かったから、前回智也に会った時、彼の着ていた服のタグをこっそりと覚えておいたのだ。
同じブランドでも、一番安価な物にしか手が届かなかったが、それでも彼の喜ぶ顔が見ることが出来て良かったと思う。
「っ!」
「やっと緊張が解けてきた?」
「佐野さんっ、何をするんですか」
丁寧に箱の中へとマフラーを戻した智也の腕に、突然体を持ち上げられて、驚いた類は咄嗟に彼の逞 しい体へしがみついた。
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