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「叶多、そんなことって、どんなこと?」 「……それは、その……」  あらぬことを考えてしまった自分自身が恥ずかしくなり、叶多が頬を真っ赤に染めると、佐野もクスクスと笑い出す。そして、 「もしかして、エッチなことでも考えちゃった?」  などと、内緒話でもするみたいに顔を近づけて言うものだから、動転した叶多はつい、 「ちがう、そんなこと……全然してないから」 と、自ら墓穴を掘るような発言をしてしまった。 「え? してないって……」 「お話中(はなしちゅう)、失礼します」  さらに話を聞きだそうとした瞬が口を開いたところで、背後から急に声がしたから、叶多は体を震わせる。 「驚かせてすみません。佐野さん、少しいいですか? 前年度の書類の件で少しお伺いしたいことがあるので」 「ああ、いいよ今行く。だけど類、良くここが分かったね」 「そ、それは……探しましたから」 「電話してくれたらよかったのに」 「そうですね。思いつきませんでした」  ここは、校舎からは少し離れた裏手にある庭園で、あまり生徒はやってこないから、探して見つけ出したとすれば結構時間がかかった筈だ。  ポーカーフェイスな射矢の頬が僅かに上気しているのは、もしかしたら走って佐野を捜していたからかもしれない。 「じゃ、行くね」  優雅な所作で立ち上がり、ヒラヒラと片手を振った佐野が、射矢と二人で立ち去る姿を何の気もなしに見ていると、隣から瞬が「健気だね」などと言ってくるから、叶多は僅かに首を傾げた。 「どういう意味?」 「書類のことなら元書記に聞くだろ。それが、わざわざ佐野を探してここまで来るんだから……察してやんなよ」 「……あっ」  いくら恋愛に疎い叶多でも、そこまで聞けば流石に分かり、驚きの声をあげてしまう。 「あの二人は、もしかして、つき合ってたりするの?」 「そうみたいだね。射矢って能面みたいな奴だと思ってたけど……夏からちょと雰囲気が柔らかくなったのは、佐野効果かなって思ってる」  夏からと言った辺りで、瞬が言葉に詰まった理由は分かっている。  夏に起こったあの事件を、思い出すのは辛いだろうと気遣ってくれているのだ。

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