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「焦りは禁物だ」 「……はい」  そんな気持ちを見透かしたような言葉を掛けられ叶多は頷く。  実は、夏休みが終わって以降、学校へ通えているのは、ようやく週の半分程度だ。  その理由の大半は、夜中にうなされて起きてしまうというもので、そこからなかなか眠りにつけず、気づけば朝になってしまう。  それでも……起きてさえいれば学校へ行くが、明け方ちかくに眠ってしまうと、昼が過ぎても目を覚ますことが出来きないという状況だった。  しかも、学校へと通える時にはしっかり授業を聞いているのに、全くといっていいほど頭の中には入ってこず、先日あった中間テストの結果は酷い有様だった。  このままでは進級すら危ういと、担任からも言われている。 「起き上がれるかい?」 「はい」  優しい声に促されるまま叶多はゆっくり起き上がり、まだ眠い目をこすりながらも窓の外へと視線を向けた。  そして、良く晴れた秋の高い青空に、昼は過ぎていることを知る。 ――どうして、こんな風になっちゃうんだろう。  何故、こんな事態になっているのか叶多には良く分からなかった。  否、医療的な診断なら既についているのだが、和希や周りが思っているほど、心の中に大きなトラウマを抱いているとは思わない。  むしろ今は、好きな相手や友人達に囲まれており、病気へ入院している母にも会いに行けているから、幸せだと思いはしても、無意識とはいえ過去に囚われて苦しむ要素は無いはずだった。  それなのに、夜毎繰り返す夢の内容は、辛い経験を忘れさせないようにとばかり、過去の映像を映し出す。 「大丈夫。絶対元に戻るから」 「……はい」  励ますように背中を叩く和希の方へと視線を移し、叶多は小さく頷くけれど、不安ばかりがこみ上げてきて、 『本当に元に戻るのか?』 『自分は頭がおかしくなっているのではないか?』 などという疑問が喉まで出かけるが、それを声にして問いかけることは、みんなを思うと出来なかった。

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