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ここまでくると、もうなんとなく事の顛末の予測はついた。
おおかた、叶多の悩みを聞いた久世が計画を立てたのだろう。落ち着いてよく考えてみれば、智也があれほど見え透いた挑発をした理由も見えてきた。
――それに引っかかる俺も、大概周りが見えてない。
自嘲気味に微笑みながら、横抱きにした叶多の体をベッドの上へと横たえて、全ての服を取り去っていくと、あばらの浮いた薄い体がカタカタ細かく震えている。
夏休みが終わってこちら、最低限の食事はするが、時折トイレで吐いているのは知っていた。だが、それにしても――。
「痩せすぎだ」
「ごめ……ごめんなさい」
「怒ってるわけじゃない」
栗色の猫毛を優しく梳くと、安堵したように吐息を漏らす。
出会って少したった頃から、抱けば壊してしまいそうだと思っていたが、分かっていながら散々叶多にむごい仕打ちを強いてきた。
だからこそ、今、抱くのが最善なのかと不安になるが、それを叶多が望んでいるならば話は別だ。
「あ……ゆうやく……んぅ」
まずは、仰向けにした叶多の脚を肩の上へと担ぎ上げ、堅く閉ざされたアナルの縁へと丁寧に舌を這わせていく。
この体勢は叶多にとって多少苦しいかもしれないが、俯せにするとその表情を読みとることができなくなるから、なるべく負担にならないように腰の下へとクッションを入れた。
「ん……ふぅ……う」
舌先を中へ挿し入れながら、目線の先で勃ちあがっているペニスを指でなぞっていく。すると、無意識なのか腰が揺れ、尿道口をつついてやれば、粘り気のある透明な滴が悠哉の指先を潤わせた。
――気持ちは悦いみたいだが……。
体の反応は素直なもので、舌を招き入れるようにアナルはヒクヒクと伸縮する。だが、それでも止まらぬ体の震えが悠哉にはひどく気になった。
「あ……っ、ゆうやく……」
ここは一旦落ち着こうとして悠哉が舌を引き抜くと、薄く瞼を開いた叶多は不満げな声を漏らすけど――。
「震えてる。怖いんじゃないのか?」
問いかければ、首を横へと振るけど……シーツを掴んでいる掌は血の気が引いて真っ白だ。それに、体の反応とは裏腹に、表情はかなり強ばっている。
理性の箍はすでに限界を超えてしまった状態だったが、それでも踏み留まれたのは、ひとえに叶多が大切だという想いが勝ったからだった。
「いまならまだ……」
「……止めないで」
止められるという言葉は叶多に遮られ、悠哉が驚き目を見開くと、シーツから離れた彼の指先が自分の方へと伸びてくる。
「嬉しいのに……悠哉くんだって、分かってても……体が勝手に……目の前に、いるのに……」
手を握り、時間をかけて、途切れ途切れに紡ぎ出される叶多の言葉を聞くうちに、こんな時でさえフラッシュバックに苦しめられてることを知った。
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